■善き人

■作:C・P・テイラー,演出:ドミニク・クック,出演:デヴィット・テナント,エリオット・リーヴィ,シャロン・スモール他
■TOHOシネマズ日本橋,2023.10.20-(ハロルド・ピンター劇場,2023年収録)
■登場人物は小説家のジョン、その妻ヘレン、そして親友モーリスの3人。 でも一人数役を熟す。 その替わり方が激しい。 妻を演技をしていると突然、祖母や女学生アンになったりする、整合性はとれているが。 同じようにジョンやモーリスはゲッペルス、アイヒマン、ヒトラーなどなどに替わる。 忙しいですね。 
舞台道具はほとんど何も無い。 そして3人は台詞を喋り演技をするだけです。 効果音はスタッフが出しているらしい。 たとえばドアを開ける音など日常音のほとんどは舞台外から発します。 面白いですね。
ジョンは小説家らしくゲーテやトーマス・マンなどを話題にし、彼の蔵書「失われた時を求めて」を焚書とする場面もある。 音楽への興味は特に高くワーグナー、ベートーベンはもちろんジャズなどポピュラー系の話題も多い。 その楽曲が背景に流れる。 これが物語に効いています。
ジョンは安楽死の論文をヒトラーに気に入られナチスに入党する。 安楽死の議論が中心になるのか? でもそうならない。 彼の生活場面の描写が多い。 後半、親友でありユダヤ人モーリスとの切実な対話も中途半端になってしまった。 話題の詰め込み過ぎでしょう。
・・いつのまにか彼は親衛隊SSの制服姿でアウシュビッツ駅のホームに立っている。 彼はおもむろに「ドン・キホーテ」を取り出す。 そこに囚人服姿のユダヤ人が演奏する「軍隊行進曲」が聴こえてくる・・。
一人数役のためテンポが速い。 ジョンの世界は家族と親友と恋人、文学に音楽、そしてナチスと扱う範囲が広い。 終幕は何とかまとめたが、ジョンの苦悩は速くて広くて上滑りしてしまった。 そして彼はいつのまにか<悪き人>になっていた。 その善悪の境はもはやどこにあるのか見えない。
今日の観客は若い女性が多い。 NTLの年齢層はいつもは高い。 スクリーンNOを間違えた? 確認のため入口に一度戻ってしまいました。 今回は特に地味で深刻なのに何故でしょうか?
*NTLナショナルシアターライブ作品
*「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ドミニク・クック ・・検索結果は2舞台.
*追記・・続けて下記□の同名映画(2008年製)も観る.
□善き人
□監督:ビセンテ・アモリン,出演:ビゴ・モーテンセン,ジェイソン・アイザックス他
□DVD(イギリス・ドイツ,2008年作)
■映画は写実的なため分かり易い。 ところでNTLの舞台では演出家が対位法を採用したと言っていたのを思い出す。 一人数役の関係を音楽的に処理していた。 この複雑さのため(映画と違い)舞台は想像力を必要としました。