■ローエングリン

■作曲:R・ワーグナー,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,演出:フランソワ・ジラール,出演:ピュートル・ベチャワ,タマラ・ウィルソン,クリスティーン・ガーキー他
■東劇,2023.4.21-27(METメトロポリタンン歌劇場,2023.3.18収録)
■薄暗い洞窟のなか、丸く空いた天井から月や星々がみえる。 映像では無機質な暗さに感じる、でも生舞台ならリアルな空気に包まれそう。
いつもの髪型でワイシャツ姿のP・ベチャワは異邦人の出現としては合格だけど騎士にはみえない。 近くの会社員が昼食の為に事務所から出てきたみたい。 声と演技の成熟度は彼にとって今が一番かな? 5時間の長さでも安定感があった。 それは演奏にも言えるわね。 指揮者ネゼ=セガンは幕ごとに衣装を替える余裕がある。 130人もの合唱団は衣装裏地の色彩だけで動きある舞台を演出していた。 ヴェルディとワーグナーを区別しないエルザ役タマラは淡泊すぎて魔女オルトルート役ガーギーの陰に隠れてしまったのが残念だわ。 でも観後に振り返るとこれも有りかも。
「・・疑念が心に芽生える」。 騎士とエルザの約束はそのまま物語と契約の狭間に揺れる現代社会の一面をも見せてくれる。 METでは1883年初演から数えて624回目のローエングリンらしい。 指揮者・演出家などスタッフにその余裕と責任が感じられる舞台だった。 楽しかったわよ。
*METライブビューイング2022作品