■幻想の箱舟

脚本:酒井一途,演出:岩渕幸弘,出演:ミームの心臓
荻窪小劇場,2012.9.26-10.3
箱舟に乗った主人公シャンスラードは、幸せではないが満足している乗客たちに出会う。 彼らはしかし何者かわからないが脅かされてもいる模様。 箱舟がどこへ向かっているか誰もが見えない状況で乗客たちの対立が激しくなっていく・・。
裏の意味を持っていない、とてもシンプルな科白です。 舞台はこれで役者たちをブレない姿にしています。 多くの議論にもかかわらず濃厚さが失われサッパリした芝居です。 音楽や照明はメリハリのある役者の喋り方と合っていました。
箱舟の中の不満や不安はそのまま現代の若者が置かれている状況です。 そして芝居が提出する答えもはっきりしていません。 箱舟が大地から離れていなかった終幕のオチも物語は始めに戻ってしまったことでわかります。
それでも箱舟に乗った意義はあります。 行きつ戻りつの議論をしながら前進するしかないのです。 そして脚本にサッパリ感を失わずにコクのある味付けができればまた一歩前進です。
*チラシ、http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage_reverse28553_1.jpg?1348787868