■浮標

作:三好十郎,演出:長塚圭史,出演:葛河思潮社
世田谷パブリックシアタ,2012.9.20-30
舞台は海岸のように砂が敷き詰められている。 その周りは板で囲って椅子が置いてある。 役者達が椅子に座り出番を待っているが、衣装を着替える時などは外している。 4時間だからリラックスして観てくれ、と長塚圭史が幕開きに言っていた。
しかしあまりにも真面目な姿勢で椅子に座っている役者達や、久我五郎の叫ぶような台詞でリラックスどころではない。 激しいセリフが一幕・二幕と続くが、しかし、どうも眠くなってしまう。
尾崎との借金議論や比企との医学議論、そして美緒との神の議論が五郎の苦悩に結びついていかない。 それは聖母のような美緒が五郎の生への執着を避けているからだ。 五郎の議論では「生」が充実しないことがわかっているから。
圧倒的な「死」を前にしている「生」は誰もが避けられない。 しかしこの運命に縛り付けられてそのまま舞台に乗せているだけの作品ある。 「生」の執着しかみえない。 五郎は叫ぶ以外に方法がない。 遣る瀬無い芝居になってしまった。
*チラシ、http://setagaya-pt.jp/theater_info/upload/file/bui_pm_pdf_dl_file.pdf