■未練の幽霊と怪物ー挫波、敦賀ー

■演出:岡田利規,音楽・演奏:内橋和久ほか,歌手:七尾旅人,出演:森山未來,片桐はいり,栗原類ほか
■神奈川芸術劇場・大スタジオ,2021.6.5-26
■能の形を取り入れた音楽劇と聞いて期待して劇場へ向かう。 休憩を途中に挟んで「挫波ザハ」と「敦賀つるが」の2作品を上演。 囃子方は3人、見慣れない楽器で聴き慣れない幽玄的な演奏が面白い。 歌手七尾旅人が一人で地謡を受け持つ。
「挫波」はまとまっていたように思う。 科白をゆっくり喋りながら独特な手足の動きをするワキがなんともいえない。 演出家の得意とする振付だ。 囃子の流れに乗った地謡の声も舞台に溶け込んでいく。 アイで登場した片桐はいりの早口の喋りがまた楽しい。 囃子、舞、謡の三拍子が揃った独特な雰囲気が恍惚感へ導いてくれた。 能に似た感動を得ることができた。 ザハ・ハディドは成仏できただろうか?
「敦賀」はワキとシテの役者が替わっただけで前作と同じような構成だ。 文殊菩薩と高速増殖炉を繋げようと試みているらしい。 しかし亡霊がヒトでないため空洞に居るような体感がおそってきた。 亡霊とは何者か? 不思議な舞台だ。 舞が長くて全体の調和が崩れたようにみえる。
横浜駅へ向かう帰りには作品のいろいろなことを考えてしまった。 刺激的な舞台だった。 ところでアイの科白が多過ぎて諄く感じた。 少し省くと面白さに深みがでる。 それとギクシャクした動きの多い舞に見えた。 弛緩と緊張の間の動きが速すぎるのかもしれない。 久しぶりに楽しめた舞台だった。
*第72回読売文学賞受賞作品