■虹む街

■作・演出:タニノクロウ,美術:稲田美智子,出演:安藤玉恵,金子清文,緒方晋ほか
■神奈川芸術劇場・中スタジオ,2021.6.6-20
■これはテーマパークか!? 場内に入った途端、薄汚れた街並みに眩暈がしました。 ・・しかし舞台は何も進まない。 男が乾燥機を回し、洗濯物を畳み、女が自動販売機で買食し、中国人親子が歩き回り、車椅子での散歩、アラブ人が路上賭博で、ママとギター弾きがフィリピンパブで歌い、親分がウロウロ・・。 事件といえば、女がコインランドリーを閉店することぐらいでしょう。
美術の路上観察に従い街並観察劇と言っても良い。 古びた街並みを行き交う人々、商店街の様子、町内の小さな出来事を観客は眺めている。 映画でときどき出会う方法です。 それはミニマムなリズムが心地よい。
しかし飽きてしまいました。 このリズムを演劇空間に巧く変換できなかった。 凝った美術は汚すぎる。 脇役に一般人?を登場させたのは面白いのですが。 細かい日常の演技が大げさすぎる。 過剰でリズムが蒸発してしまった。
男と女、二人の行動に謎がみえたのは救いでした。 謎とは思いやりのようなものでしょう。 それは街中に漂っていた。
ところで戦後には、自動販売機やコインランドリー、もちろん洗濯機や乾燥機、携帯電話は無かった。 この舞台は戦後の福富町から未来(現代)を描いたSF作品だったのでしょうか? 長塚圭史の挨拶文でブレードランナーを話題にしていたのでこの解釈もできそうですね。