■鰯賣戀曳網 いわしうりこいのひきあみ

■作:三島由紀夫,演出・振付:藤間勘祖,出演:中村勘三郎,坂東玉三郎ほか
■新宿ピカデリ,2021.6.4-24(歌舞伎座,2009.1.-収録)
■深刻さを隠したさっぱりした喜劇ですね。 エッジの効いた五条橋を背景に、鰯売の猿源氏と父親である遁世者海老名なあみだぶつのリズムある台詞回し、博労六郎左衛門と栗毛のユーモアある動きで直ぐに舞台に入っていけました。
遊女が並ぶ遊興の座敷に傾城蛍火が登場する場面も絵になっている。 猿源氏の魚介類合戦譚や寝言、そして蛍火の隠し事がほどけていく問答は親密なリズムを保っている。 商売人の声が気に入るのも蛍火実は丹鶴城の姫らしい。
そして「伊勢の国に阿漕ヶ浦の猿源氏が鰯かうえい」の合唱で終わるのが楽しい。 これは三島由紀夫の<大人の童話>かもしれない。 深刻さを隠したと書きましたが、限りある人生あたって砕けろしかないということでしょう。
*シネマ歌舞伎第37弾作品
*「ブログ検索」に入れる語句は、三島由紀夫