■フェイクスピア

■作・演出:野田秀樹,出演:高橋一生,川平慈英,前田敦子ほか
■東京芸術劇場・プレイハウス,2021.5.25-7.11
■恐山イタコのもとに古き同級生が亡き父の口寄せを依頼するところから物語が始まる。 厚化粧のイタコ役白石加代子はともかく、同級生役だがそのまんまの橋爪功が登場したので現実に戻されてしまった。 これも異化効果かな?
イタコはリア、オセロ、マクベス、ハムレット、そしてシェイクスピア本人から彼の子供?の霊まで呼び出す。 しかも言葉に謎を持たせ後場面でそれを解く演出家独特の方法で進めていく。 もちろんシェイクスピアは野田秀樹が演じているが、まさにフェイクスピア。 ・・次第に、同級生の父(高橋一生)の声が舞台に滞留していく。 
<劇中劇>と<コトバ中コトバ>を掛け合わせたメタ・メタシアターと呼んでもいいだろう。 その展開は夢と現実の境界を溶かし、空間と時間を飛び越えてしまうメタメタさがある。 言葉にのめり過ぎて芝居が観念的になったようにも思えた。 しかし、それを一掃する終幕がやってくる。
神々の使者やコロスのようなカラスが探していた<声の箱>はなんとボイスレコーダーだったのだ。 そして舞台は一転、ボーイング747の機内を再現する。 機長だった父が叫ぶなか飛行機は乗客と星の王子様を連れて高天原山の樹海の中へ消えていく・・。
木々が倒れる幕開き、父の声「頭を下げろ!」「頭を上げろ!」、神々の登場と高天原、「大切なものは見えない」星の王子様、・・全ての謎がここで消える。 747機内の場面だけを切り取って一つの作品を作れるくらいだ。 コトバで充満していた舞台がここで初めて身体を得たように感じた。
*NODA・MAP第24回公演
*「ブログ検索」に入れる語句は、野田秀樹