■外の道

■作・演出:前川知大,出演:浜田信也,安井順平,盛隆二ほか,劇団:イキウメ
■シアタートラム,2021.5.28-6.20
■いろいろなことを頭に浮かべながら観てしまった。 この劇団はいつもそうだが。 「気がついたらここにいた・・」。 認知症を考えてしまった。 認知状態をリアルに想像できる舞台だ。
そして意識ついて。 それはいつ獲得したのか? 子供の頃のある夕方、自宅近くで「ここにいる」と自身の存在を初めて意識したことを覚えている(たぶん)。 ヒトは3歳頃に意識を獲得することが既に知られている 。 また三島由紀夫の産湯の話から記憶の取得は意識より早いのが分かる。
そしてガラスの破片を脳内に挿入できるか? 原子を野球ボールの大きさにすると電子は数百mも離れて原子を回っているらしい。 つまり原子や電子を取り巻く空間はスカスカなのだ。 物質間に働く力を無視すれば挿入も可能だが・・。
後半に入ると<無>が登場する。 これは厄介な言葉だ。 ある物理理論の話だが、空間も時間も物質からできている。 それを取り除けば、・・以下省略。 <無>の描き方が具体的過ぎる。 想像力が緩い。 しかも終幕に死を持ち出すのも突飛だ。 なぜ<死>に繋がるのかがみえない。
いつもの科学と非科学の境界に横たわる謎を詰め込み過ぎてしまった。 話題を絞ればよい。 この作品の一番は「気が付いたらここにいた」意識の覚醒だと思う。 ヒトはいつもここに戻る。 「我思うゆえに我あり」より日本的なところがいい。
美術、照明、音響は余分を捨てて物語のリズムを助長していた。 そして役者全員が退場しないで舞台に居続ける方法も面白い。