■アルマゲドンの夢

■原作:H・G・ウェルズ,台本:ハリー・ロス,作曲:藤倉大,指揮:大野和士,美術:バルバラ・エーネス,衣装:ウルズナ・クドルナ,出演:ピーター・タンジッツ,セス・カリコ,ジェシカ・アゾーディ他,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
■新国立劇場.オペラパレス,2020.11.15-23
■H・G・ウェルズは芸術系SF作家とは言えない。 オペラにするとどうなるのかしら? しかも夢の話に彼は弱いはず、この作品はそれらしいが。 タイトルも漫画のようで粗筋を読んでも珍紛漢紛だわ。
・・なるほど、独特な雰囲気の舞台に仕上がっているわね。 無調のような演奏に不安が漂っている。 歌唱もその線に沿っている。 映像の多用もその雰囲気を支持している。 全体の不気味な統一感が何とも言えないわね。
主人公クーパーの夢の中の話らしい。 彼が「アルマゲドンの夢」を見るということなのね? でも夢と現実の境界は定かではない。 その中で妻ベラとの日常場面が素敵ね。
社会活動へ向かうウェルズらしい展開がより不協和音を奏でる。 それはサークルという政治組織の登場よ。 <ストームトルーパ>のような彼らの姿がオペラを忘れてしまう。 まさに「来るべき世界」の前触れを描いた作品になっていく・・。 でもウェルズSFをまとめ切ったのはオペラの総合力だとおもう。 なんとも言えない味わいが残った。  ジワッ、と後から効いてくる気がする。
*NNTTオペラ2020シーズン作品