■じゃじゃ馬ならし  ■オープニング・ナイト

■東京芸術劇場.プレイハウス,2020.11.6-8(2009,2010年収録)
□じゃじゃ馬ならし
■原作:W.シェイクスピア,演出:イヴォ.ヴァン.ホーヴェ,出演:ハンス.ケステング,ハリナ.ライジン他,劇団ITA(インターナショナル.シアター.アムステルダム)
■「ローマの悲劇」公演中止は残念でした。 代わりがこの映画ですか。 舞台記録映像ですがそうは見えない。 編集がけっこう入っているからです。 ・・ビール箱が運び込まれるところから始まります。 パトヴァ商人のじゃじゃ馬娘カタリーナにヴェローナの紳士ペトルーキオが求愛するストーリーだが、ハイネケンを飲みながらの役者たちの演技は乱痴気騒ぎそのものです。
カタリーナの八つ当たりはモテモテの妹ビアンカに嫉妬していたのでしょうか? 父を含めた家族から解放されたいが為のヒステリーにみえる。 ペトルーキオの前に立つと動きも言葉も少なくなってしまったからです。 彼女の行動は素直すぎる。 しかもペトルーキオとの間には愛というものが育っていかない。 彼女がロボットのようにみえてしまった。 ペトルーキオの命令調の台詞もカタリーナの心まで届いていない。 これはどうしたことか!  しかし舞台パワーは全開ですね。 二人の愛はどうでもよい?
ところでペトルーキオが観客に喧嘩を売るような場面がある。 客にまぎれた役者でしたがちょっと驚きました。 小劇団ではよくあるのですが・・。 そして妹ビアンカは姉より曲者ですね。 求婚者も妹と似た者同士というのがこの舞台の面白い所でしょう。 妹の行動は当に地獄の祝祭です。
ともかく刺激的な内容だったので次上映の「オープニング・ナイト」も観ることにしました、主人公二人への不満も少し残った為です。
□オープニング・ナイト
■原作:ジョン.カサヴェテス,演出:イヴォ.ヴァン.ホーヴェ,出演:エルジー.デ.ブラウ,ヤコブ.デルヴィグ他,劇団ITA
■初日を向かえる劇団の舞台裏を描いた作品です。 いやー、混乱しました。 舞台上に客席があり本物の観客が座っている。 そこで役者たちは稽古はもちろん劇中の本番も演ずる。 つまり目の前の演技が劇中劇中劇のどのレベルにいるのか一瞬分からなくなるからです。 主人公は中年を過ぎて年齢をとても気にしている看板女優ミルトルです。 その劇中劇の共演の夫となる男優が劇中での前夫というのが又複雑です。 でも、これらは全て芝居の背景に過ぎない。
劇中劇の女優として、劇中の私生活者のミルトルとして、彼女の人生模様を描くのが主題のようです。 しかしここで幽霊を登場させてしまった。 彼女の目の前で交通事故に遭い死んでしまった若い女性ファンのナンシーを、です。 ナンシーを通してミルトルは女優を語っていくことになる。 老女優は何を抱え込んでいるのか? それは年齢に対する複雑な心境です。 込み入った面白さが舞台の隅々まで漂っていました。
2作品を観てやっと満足しました。 演出家の姿も少し見えてきた。 もう1本残っていますね。 最後はジャン・コクトー原作の「声」です。 コクトーとホーヴェの組み合わせは全く想像がつかない。 気になります。 でも残念ですが、・・都合があるので、今日はこれで終わりにします。