■バッコスの信女ーホルスタインの雌

■作・演出:市原佐都子,音楽:額田大志,出演:川村美紀子,中川絢音,永山由里恵ほか
■神奈川芸術劇場.大スタジオ,2020.9.24-27
■牛の生殖は人工授精のため雌と雄が一度も交じり合わない。 家畜業に携わっていた主人公の主婦の面白い経験談が続くのでついつい耳を傾けてしまう前半である。 牛から人のセックスへ脱線もする。 そこへ牛とヒトの仲介役ケンタウロスを登場させ、雌牛たちの合唱隊も加わり、性と生殖の格闘が展開される・・。
牛ばかりかヒトの性も生殖も管理されてしまっているのではないのか?と、考えさせられる場面が多い。 女の性と生殖は社会の掟に雁字搦めにされている、と暴き出すかのようにペニスのようなクリトリスを付けたケンタウロスが転げまわる。 主人公も専業主婦に納まり牡牛の射精で使う生殖器具のアイロンと同じになってしまった。 セックスは止められない。
ジワッジワッと、女の怨念のようなものが滲み出てくる舞台だ。 この雁字搦めを粉砕したい!と。 女の性を雌まで射程にいれての激しい舞台だったが、冷凍精液の雄は脇役をも転げ落ちてもっと惨めな未来が待っていそうだ。 性差を縮めることがリスクを下げる時代なのかもしれない。
*第64回岸田國士戯曲賞受賞