■その河をこえて、五月

■作:平田オリザ,金明和,演出:李炳焄,平田オリザ,出演:三田和代,小須田康人,佐藤誓,白星姫,李南熙,徐鉉喆ほか
■新国立劇場.情報センター,2020.2.9(新国立劇場.小劇場,2002.6収録)
■「2002年春、ソウル漢江の河原。 韓国語学校教師金文浩は、・・生徒たちと自分の家族を連れて花見に出かける・・」(チラシより)。
生徒たちの年齢・職業はいろいろだがソウルで生活している在韓日本人が多い。 河原の土手に満開になった大きな桜の木がみえる。 舞台は終幕まで花見が続き、役者の出入りで場面を転換してく方法は青年団定番の流れと同じである。
生徒の達者とは言えない韓国語が話を面白くさせる。 ベトナム戦争で家族が戦死したことや徴兵制度への対応は韓国を知る上では必須だが、親の介護や子供の学校の話はどの国も同じ問題を抱えているのが分かる。 そして話の至る所で堆積された20世紀日韓史がパッと顔を出す。
教師の弟夫婦がカナダへ移住しようとしているのだが母親には言っていない。 花見の席上で母に打ち明けるところが物語の山場である。 家族が移民をすることで国家とは?民族とは?を真剣に考えせざるをえない。 この点は練られていると思う。 
今から20年前の芝居だが、一口で言えば素直な舞台だ。 具体的な話題は広げすぎて表面的にも感じられる。 日韓共同も走りで、それに花見だからしょうがない。 この20年間で情報量が増えたこと、より深みのある日韓共催舞台を観て来た為もある。
唯一存在感ある人物は教師の母親(名前は忘れた)だ。 彼女の一挙一動に写実という意味ではない現実感があった。 保守的な彼女は次男夫婦のカナダ行を最後に許すのだが、それは国家や民族を越えて在る世界へ、生きる為そして生活の為の移民に納得したのかもしれない。 「浜辺の歌」を皆で歌い花見は終わる・・。
*2002年日韓国民交流年記念事業作品
*NNTTドラマ2001シーズン作品