■幸福論、現代能楽集Ⅹ「道成寺」「隅田川」より

■作:長田育恵(隅田川),瀬戸山美咲(道成寺),演出:瀬戸山美咲,出演:瀬奈じゅん,相葉裕樹,清水くるみ,明星真由美,高橋和也,鷲尾真知子
■シアタートラム,2020.11.29-12.20
□道成寺
■橘家の父・母・息子3人は職歴・学歴たぶん財産も申し分ない。 世間では成功者とみられそうだ。 彼らもそう確信している。 3人は無意識に高慢となり他人の幸せや生き方が分からないし許せない。 しかし所詮は種として似た肉体・精神を持つ者同士だ。 弱みは誰でも持っている。 その弱みを他者から言われたくない。 貶し蔑みした相手から反撃を食らい結局3人は退場する・・。   
このような優越感の欠片を持つ人は数多いる。 人の振り見て我が振り直せ、と言われているような舞台である。
□隅田川
■3人の女の生き様を縄に撚っていくようなストーリーである。 そこに母娘関係、堕胎、人工妊娠、介護老婆等々を煉り込んでいく。 男の身として弱い所を突いてくる内容だが背景に男女不平等がみえる。
先の「道成寺」は原作との関係がよく見えなかった。 この「隅田川」は母と子供(ここでは胎児)との再会が胸に滲みる。 しかし幸福とは何だろう? 2作品の切り口は違うがどちらも社会問題が詰まっている。 観ながら自身のことから世間のありようまで考えてしまった。 現実に引き戻される舞台に弱い。 このような作品は避けているのだが・・。