■シラノ・ド・ベルジュラック

■作:エドモンド・ロスタン,演出:ジェミー・ロイド,出演:ジェームズ・マカヴォイ
■TOHOシネマズ日本橋,2020.12.4-(プレイハウス・シアター,2019年収録)
■白枠で周囲を強調した舞台には椅子とマイクしか置いていない。 役者たちは普段着で登場したが時代は1640年。 ヒップホップ系のノリもあり、椅子取りゲームのような動きが面白い。 大きな鼻を持つべきシラノが素顔で登場するのは初めてでしょう。 彼を眺める時は肉体を離れて言葉に集中できます。
ロクサーヌの詩への入れ込みようは半端ない。 詩作ができないと肩身が狭い。 クリスチャンの存在感が消え失せてしまいましたね。 ここまで詩作優位を誇る作品でしたっけ? ロンドンとパリの違いを意識していたことから、パリへの対抗心のためシェイクスピアの国としての詩作を強調したのかもしれない(?)。
後半は照明も役者の動きも緩くなる。 ロクサーヌが戦場に来ること自体に無理がある、いつも観ながらこう思ってしまいます。 クリスチャンへの肩入れ理由をシラノは「俺は詩に取りつかれた狂人さ!」。 でも取り持ち役はやはり侘しい。
NTLナショナルシアターライブを気にしているとロンドンの演劇状況がわかります。 奇想天外なシェイクスピア作品はともかく、今回は特に美術や小道具、役者の動きなどに大胆な試みがあり、大鼻を含めた身体に対する差別への抵抗も強く感じられました。
*NTLナショナル・シアター・ライヴ作品