■雉はじめて鳴く

■作:横山拓也,演出:眞鍋卓嗣,出演:若井なおみ,深堀啓太朗,保亜美ほか
■俳優座,2020.1.10-19
■高等学校を舞台にした小説や芝居は面白い。 誰もが通過してきた場所だから思い出しながら観てしまった。 登場人物の性格や繋がりを上手く表現した科白の面白さで引き込まれてしまう。 思わずゥフッゥフッと笑いが漏れてしまう箇所も多くある。
女性教師マユと男子生徒ケンの関係を謎にしている舞台だ。 それは師弟関係、恋人関係、カウンセラー&クライアント関係等々あるが・・。 ケンは悩んでいるらしい。 それが家族崩壊だと分かってくる。 
それにしても高校教師は大変な仕事だと今更ながら思ってしまった。 学校組織の外に問題の要因がある場合に教師はどのように行動し解決していくのか?
その前に<問題は個人で抱えるな!>はどの組織でも言える。 教師マユは男子生徒との関係をどの時点で個人から切り離し組織へ渡せばよかったのか? 舞台を観ながら考えてしまった。 スクールカウンセラーも答えられない。 しかもこの作品は結末が<芝居的>だ。 教師マユは「自分が責任をとる!」と叫ぶ。 たとえ部下が一人で問題を抱えてしまっても管理者が責任を取るのが組織の存立理由でもある。 校長はそう動こうとしているようで少し安心した。 会社組織のことも考えながら観てしまった。 サッカー部マネジャーが教師へ問う最後の言動は立派、そして教師マユは行動に問題もあるが直向きな人間愛がケンに伝わったのがこの芝居のオチだろう。 それは母性愛の様なものかもしれない。
ということでプログラムを買うことにした。 この芝居もそうだが、ドロドロした人間関係が広がっている生徒の後ろへ片足どころか両足を教師は突っ込むしかない。 「教員の皆様、日々ご苦労様です」と作家も書いている。 タイトルの「雉はじめて鳴く」はケンの母への反抗を指していると見たが、教師との関係が新しい段階に入った意味もあるようだ。 終幕の車椅子の女とそれを引く男が誰だったのかは書いてなかった。
*劇団俳優座第340回公演
*CoRich、https://stage.corich.jp/stage/104053