■エレファント・マン THE ELEPHANT MAN

■作:バーナード.ポメランス,翻訳:徐賀世子,演出:森新太郎,出演:小瀧望,近藤公園,花王おさむ他
■世田谷パブリックシアター,2020.10.27-11.23
■何が言いたいのかよく分からない舞台だった。 幾つかの科白を聞き逃してしまった為かな?
主人公ジョン・メリックが息を引き取った後、医師フレデリック・トレヴェスの悩む理由が伝わってこなかったこともある。 観後に演出家の解説を読んで少しは納得できたが・・。
主人公のケンダル夫人への性衝動が医師ドレヴェスの規律信仰に背むいたことは確かだが、自助共助に加え公助がはっきりとしてきた時代の医師の判断と受け取ってよさそうだ。 それは救貧法などイギリス福祉制度を含めた社会の転換期が舞台から感じ取れたからである。
「ロミオとジュリエット」の愛の問題、芸術とプラトン主義、トーマス・ハーディの紹介など二人の対話を聞くとメリックは結構な読書家だ。 天国を信じる時の態度や表情も彼を無垢から遠ざけている。 もはや時代は無垢を許さない。
らい病と比較する場面もあったがメリックの遺伝学的疾患は伝染病とは違い見世物小屋などの対象になるのだろう。 身体的差別を喜劇にする時代は現代と違い開放的にもみえる。
1880年代の舞台は日本なら明治時代に入ったばかりだ。 制度の破壊と構築が進む雰囲気は感じられたが方向性の無い舞台にみえた。 ツギハギだらけのこのブログは私の方向性の無さにあるのだが・・。
ところで主人公の顔に布袋をかける場面ではデヴィット・リンチの同名映画を思い出してしまった。 メリック役小瀧望は素顔で口元や手足を曲げて演技をしていたがとてもよかった。 エレファントマンを熟せる体格も持っていた。 観客に若い女性が多かったが彼の贔屓筋かな?
*世田谷パブリックシアターx東京グローブ座
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