■能楽堂十月「仏原」「蝉丸」

*国立能楽堂10月の定例公演と普及公演の下記□4作品を観る。
■国立能楽堂,2021.10.9
□蟹山伏 かにやまぶし
■出演:山本則俊,若松隆,山本凛太郎ほか(大蔵流)
■「二眼天を向き、一甲地に着かず、大足二足小足八足、右行左行して遊ぶ者の精だ・・」。 野村萬斎が子供番組でチョキチョキしているが生舞台を観るのは初めてだ。
□仏原 ほとけのはら
■出演:片山九郎右衛門,副王知登,山本泰太郎ほか(観世流)
■舞台の時間は進みが遅い。 それも無機質に近づいていくようなあっさり感が漂う。 観客は「平家物語」「祇王」を舞台に積み重ねながら時間を有機質に変えながらみていくのだが、それもいつしか霧のように消えていく。 
□清水
■出演:野村萬,野村万之丞(和泉流)
■「いで食らおう、アア、アア。ヤイヤイ、ヤイそこなやつ」。
□蝉丸
■出演:武田宗和,山階彌右衛門,殿田謙吉ほか(観世流)
■揚幕がおもむろにあがり、橋掛りを歩いていく蝉丸とその一行の姿は劇的と言ってよい。 端折傘を持った二人の従者が蝉丸にぴたりと寄り添い、3歩下がって清貫がついていく。 身震いしてしまった。 良質の舞踏をみているようだ。 濃緑色の衣装もいい。 この場面だけで全てに満足してしまった。
プレトークがあった。 松岡心平の「蝉丸」を意識した「貴種流離の王女と王子」が題目。 松岡は問う、姉弟がなぜ一緒に暮らしていかないのか? 今昔物語や延喜帝、甲楽談儀のことを話し、次に梅原猛の価値の反逆者を論じ、山口昌男の王権論を支持し、日本神話のヒルコが逆髪にスサノオが蝉丸に生まれ変わった話で終わる。 先の問いの答えとして、流されることが宿命である貴種流離譚だから。 二人は流され続けなければならない・・。