■PLUTOプルートゥ

■原作:浦沢直樹,手塚治虫,演出:シディ・ラルビ・シェルカウイ,出演:森山未來,永作博美,柄本明,寺脇康文
■シアターコクーン,2015.1.9-2.1
■主人公たちはロボットである。 それも20世紀発想の旧型である。 演出家は手塚治虫ファンらしい。 舞台は二つのテーマを追う。
一つは、ロボットに感情を移植できるか? だが現代生物学も脳科学も登場しない。 人工知能とメモリチップぐらいである。 話が飛躍しすぎているがこれを承知すればそれなりの見応えはある。 作者と演出家の想像力の賜物だろう。
二つ目は、戦争で受けた憎しみを絶ち、次への戦争を回避することができるか? 結局は人間を引き継いだロボットが憎しみという感情を獲得し戦いは避けられなくなる。 似た作品に「あの記憶の記録」がある。 人の憎しみを国家間にまで拡張するとき、国家がいつのまにか見えなくなっている。 作品に限界を感じるのはこの為である。
美術や映像は素晴らしい。 技術と手作業の融合が行き届いている。 ロボットを操る黒子(衣装は白が多い)が文楽のように登場する。 この黒子は装置や道具を動かしダンスも演ずる。 役者の科白量は多くないが舞台全体で台詞を補い劇画のような感覚が迫ってくる。 とても面白く観ることができた。
*劇場サイト、http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/15_pluto/