■メディア

■原作:エウリピデス,脚色:ベン・パワー,演出:キャリー・クラックネル,ロス・スクギボン,出演:ヘレン・マックロリー,ダニー・サパーニー他
■TOHOシネマズ日本橋,2021.7.9-(オリヴィエ劇場,2014.9.4収録)
■メディアが追い詰められていく心情変化は激しく速い。 観客が持っている知識想像すべてを注ぎ込んで変化に対応しないと舞台に捨てられてしまう。
話はとんとん拍子に進む。 ヘタな寄り道が無いので気持ちがいい。 役者たちの息の強さが迫ってくる。 リズムも強い。 血まみれになりながら、二人の息子の死体を入れた袋を背負いながら消えていくメディア・・。 これをみて息が詰まってしまった。 
この作品は観た後に気が重くなることが多い。 多くの舞台は抽象化などで避けるのだが。 しかし、今回のロンドンは直截を選んだ。 メディアだけではなく夫や子供が血でべっとりになる。 でも、その重さをスピード感が振り払ってくれた。 これは劇画と言ってよい。 この舞台は重さと速さが劇画的に融合してカタルシスを発生させた。
舞台構成は2階建で、1階はメディアの住まい2階はジェイソンの住まいになっている。 映像では明暗調整が単純化されてしまうので両階の差異が複雑に迫ってこなかった。 生舞台ならより迫力が出ていたはずだ。
*NTLナショナル・シアター・ライブ作品