■一九一一年

■脚本:古川健,演出:日澤雄介,出演:浅井伸治,岡本篤,西尾友樹ほか
■シアタートラム,2021.7.10-18
■題名をみて舞台に登場するのは辛亥革命の孫文か青鞜社の平塚雷鳥か? 違いました。 大逆事件の菅野須賀子です。 幸徳秋水は1910年に逮捕され判決は翌年、・・1911年。 配られた資料を読み「予審」の意味と位置づけが分かったところで幕が開く。
主人公は予審判事田原巧という若者らしい。 事件の予審過程が舞台の大部分を占めます。 そこで提出される証拠は不十分にもかかわらず司法組織は嘘で塗り固めていく。 政権と天皇への忖度です。
田原判事は担当者の一人としてその偽りの調書を大いに悩み苦しむ。 そこで奇策を考える。 それは逮捕者26名全員を天皇大権で特赦にすることです。 これには政権へ忖度してきた彼の上司や同僚も賛同する。 逆転かと思いきや、この奇策も政府が先に用意していた!! 結局、幸徳と菅野を含め12名は死刑になってしまう。  
菅野と田原が<自由>について議論する場面があります。 菅野は束縛されない強制されない率直な自由論を展開する。 しかし田原は彼女の自由を理解できない。 彼の職業柄や立ち位置から<権利>と<義務>そして<権力>との関係も考えていたのかもしれない。 この議論は途中で有耶無耶になってしまった。
田原判事の予審での熱演は観客に届きました。 観後に知ったのですが1960年代に事件の再審請求があったのですね。 免訴になったようですが酷い裁判だったことが分かります。 しかも権力への忖度は現代も続いている・・。
*劇団チョコレートケーキ第34回公演