■フィフス・ステップ

■作:デヴィド・アイルランド,演出:フィン・デン・ヘルトック,出演:ジャック・ロウデン,マーティン・フリーマン
■TOHOシネマズ日比谷,2026.3.20-(ソーホー・プレイス,2025収録)
■6メートル四方の簡素な舞台、その周りに観客が取り囲み親密な雰囲気を映し出している。 物語は、アルコール依存症のルカが、カウンセラーであるジェームスを世話役として選ぶ場面から始まる。 二人だけで進む対話劇は、断酒更生プログラムである「告白の瞬間」に向けて緊張を高めていく。
それにしても、語られる多くが<酒>より<性>に関わるものだという点が印象的だ。 ルカの日常の「性行動」が次々と明かされ、その背景にはキリスト教的な価値観や慣習も織り込まれていく。 そして「告白の瞬間」では、ジェームスの妻までもが物語に巻き込まれてしまう。
この作品はアルコール依存症の話ではない。 むしろ<カウンセラー>=世話役とは何か? 性欲を例にとり、その役割を問いかけているように思われる。 世話役の構造は、キリスト教の<告白>とよく似ている。 しかし舞台が進むにつれ、患者(依頼人)と世話役の立場は徐々に溶け合い、対等な関係へと変化していく。 その過程は、キリスト教の慣習そのものが揺らぎ、溶解していく様子を暗示しているようでもある。 告白を真似たカウンセリング手法の衰弱を垣間見る舞台だった。 情報過多の現代では告白が難しい。
*NTLナショナル・シアター・ライブ2026作品