■能楽堂三月「鷺」「名取ノ老女」

*国立能楽堂三月企画公演の二舞台□を観る.
□復曲狂言・鷺■出演:野村萬斎,野村万作,笛:竹市学
□復曲能・名取ノ老女■出演:武田孝史,宝生和英,御厨誠吾ほか
■国立能楽堂,2025.3.28
■二舞台はいずれも復曲作品である。 狂言「鷺(さぎ)」は、太郎冠者が都で見聞した、醍醐天皇が神泉苑へ行幸した際の鷺の逸話を主人に語り、その姿を真似て舞を舞うという趣向の作品だ。 見どころは何といっても鷺舞である。 鷺の神経質な身のこなし、田圃を歩くときの慎重な足運び、そして飛び立つ軽やかさまで、要点を押さえた動きが実に楽しい。
この作品は2年前に山本凛太郎・山本東次郎の出演で観ているが、今回の舞台と比べると、粗筋や鷺舞の表現に違いがあり、似て非なる味わいが興味深い。
「名取ノ老女(なとりのろうじょ)」は<時間>が持っているメロディーとリズムが豊かに変化していく作品である。 前場では、老女の過去と現在が溶け合うように流れ、ゆったりと漂う時間が舞台を支配する。 ときどき、孫娘の甲高く澄んだ声が、未来の時間として差し挟む。
後場で早笛が入ると、護法善神が登場し、時間は一転して激しい雷雨のように押し寄せる。 まさに彼岸の時間を此岸へ持ってきたような感じだ。 護法善神は災難を除き悪魔を払い、老女に子孫までの加護を告げ去っていく。 そして舞台には、観客の心に至福の<時間>が残る。 面は名取ノ老女が「老女」、護法善神が「鷹」であった。