■能楽堂四月「岡太夫」「鞍馬天狗」
*国立能楽堂四月普及公演の二舞台□を観る.
□狂言・大蔵流・岡太夫■出演:善竹隆司,善竹十郎,野島伸仁,善竹大二郎
□能・宝生流・鞍馬天狗■出演:辰巳満次郎,内藤瑞駿,飯冨雅介,善竹隆平ほか
■国立能楽堂,2026.4.11
■プレトーク「鞍馬山という名所からみる牛若丸と鞍馬天狗の出会い」(中尾薫解説)を聴く。
鞍馬寺で過ごした義経を「平治物語」から、鞍馬山の歌枕を「古今和歌集」から引きながら話が進む。 鞍馬(くらぶ=暗部?)という土地が持つ幽暗なイメージと、敗者としての源氏の影が重なり、そこに山伏というダークヒーローが現れる構図が面白い。 一方で、この作品は桜の名所が紹介され、花見の場面では多くの子役が登場するため、明かるい趣向も多い。
舞台は暗→明→暗→と反転しながら展開し、終幕では源氏再興を予感させる語りで締めくくられる。 作者は室町時代の宮増と伝わるが確証はない、などの解説を受けた。
能「鞍馬天狗(くらまてんぐ)」は十五人もの役者が登場するが、そのうち七人が子方で、四歳ほどの幼い子もみえる。 その一人、牛若丸は溌剌として声も澄み清々しい。 対して山伏は太く落ち着いた声と風貌で、両者の対比があまりにも鮮やかで戸惑うほどだったが、舞台全体は変化に富み楽しく観ることができた。 すっかり忘れていた、子供時代に出会った嵐寛寿郎の鞍馬天狗を思い出したりもした。 後シテの面は「大癋見(おおべしみ)」(是閑作)。
天気が良かったので和服姿の観客も多く、劇場は和やかな雰囲気に包まれていた。 今日は脇正面席に座ったが、演奏や声の響きが良くて、正面席より音響が優れているように感じる。 視覚的に観るなら正面席、音を味わうなら脇正面席だろう。
狂言「岡太夫(おかだゆう)」は「和漢朗詠集」からの引用が多い作品である。 聟が舅宅へ挨拶に訪れた際の玄関でのやり取り、酒宴の席での振舞が整然としていたのが印象的だ。 嫁と聟との教養の差が、どこか皮肉として浮かび上がる舞台でもあった。