■思想8月号「鈴木忠志」

■執筆:柄谷行人,渡辺保,菅孝行,平田オリザ,中島諒人ほか
■岩波書店,2024.8発行
■演出家鈴木忠志は「日本を捨てて<日本>に行き、そこで世界に対抗する新たな演劇を作り続けている・・」。 新たな演劇とは「劇団創設・劇場創築・俳優創生の三つを一体にした」(菅孝行)、その先にあるものです。
「演劇活動の中で一番本質なことは集団の問題につきる」(137頁)。 「演劇人にとって一番の作品は劇場である」(149頁)。 「他者からの<声=言葉>に身体を変容させるため俳優を訓練(スズキ・メソド)する」(112頁)。
舞踊家金森穣は鈴木の舞台を「・・過剰な照明、過剰な美術、過剰な戯曲、過剰な衣装、過剰な身体、加えて演出家の過剰な意志」と書いている。 私も同感です。
そこから「言葉が俳優の身体によって生きる瞬間」(159頁)がどのように舞台に出現するのか? その答を大澤真幸が論じているが哲学的すぎて理解できない。 舞台感動を言葉化するのは面倒です。
本橋哲也「鈴木忠志演劇論<序説>」は鈴木の言葉を多く挟んでいて読み易い。 序説以降をまとめて単行本にするらしい。 楽しみです。
そして「トロイアの女」を論じる頁が多いのは、これが鈴木の世界的作品であるだけではなく公演回数の多さから来ていることもある。 演劇関係の本が読み難いのはその舞台を実際に観ていないとしっくりこないからです。 書く側はそれ以上でしょう。
特集号を2024年に出したのは感慨深い。 岩波書店はいつか出さなければならなかったからです。 昨年末の吉祥寺シアターで鈴木が「来年は最後の新作を上演したい!」と話していた。 これからも多くの新作を期待しています。
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