■能楽堂七月「飛越」「鵺」

*国立能楽堂七月普及公演の□2舞台を観る.
□狂言・大蔵流・飛越■出演:茂山千三郎,茂山忠三郎
□能・金春流・鵺■出演:高橋忍,舘田善博,善竹大二郎ほか
■国立能楽堂,2024.7.13
■「鵺(ぬえ)」の前場シテ面は「怪士(あやかし)」。 キマイラにはみえない。 敗者の若者にみえる。 そしてクリ・サシ・クセと流れていく場面のシテの姿・動きに圧倒されてしまった。 鵺が頼政へ次に猪の早太が乗り移ったかのように演じ、ふたたび鵺に戻り暗い海に消えていく。 ここまで興奮するとは、さすが世阿弥、舞台の面白さが伝わってくる。
後場シテ面は「小飛出(ことびで)」。 目玉が飛び出るのは人間絶体絶命の時だけだ。 「ほととぎす名をも雲居にあぐるかな・・」で鵺に頼政が乗り移るが、鵺は我に返り「暗きより暗き道にぞ入りぬべき・・」と和泉式部を読んで海に消えていく。 ここも圧巻である。
プレトーク「敗者が語る勝者の栄光」(表きよし解説)を聴いていたが、敗者が語るのではなく勝者が乗り移るのだろう。 このため舞台は敗者の無念が薄められる。 「鵺」と「頼政」の違いかもしれない。
「飛越(とびごえ)」は相手を傷つける人間の厭らしさがでている。 マウント感情を巧く表現している。 川を飛び越える動きが面白い。