■魔弾の射手

■作曲:C・M・ウェーバー,指揮:エンリケ・マッツォーラ,演出:フィリップ・シュテルツル,出演:マウロ・ペーター,ニコラ・ヒンブラント,カタリーナ・ルックガーバー他,演奏・合唱:ウィーン交響楽団,ブレゲンツ音楽祭合唱団,プラハ・フィルハーモニー合唱団
■NHK・配信(オーストリア・ブレゲンツ・ボーデン湖上ステージ,2024.7.12-19収録)
■美術の凝り方が尋常でない。 遠くには大きな青白い月が懸かり、湖畔の丘に古汚い民家が点在し、教会の時計台が倒れかかっている。 湖中では大きな蛇が馬車がベッドが機械仕掛けで大げさに動き、骸骨が泳ぎ回る。 火も多用する。
起伏の激しい道や水の中をびしょ濡れになりながら歌手たちは歌い動き回る。 合唱団の衣装や仕草もブリューゲルの絵画から飛び出してきたような中世の農民や猟師そのものね。
そこに悪魔が進行役にように登場し物語を進めていくの。 現代にも繋がるストーリーには強く引き付けられる。 悪魔に多くを語らせたのが面白い。 隠者との勝敗が有耶無耶で幕が閉じるのも異様と言ってよい。 古さと新しさが混じりあった現代ドイツ語圏の宗教感覚が滲み出る。
歌手がマイクを付けていたので歌唱はとてもよく聴き取れたわよ。 主要歌手はびしょ濡れになってもブレない。 歌唱量が少ない作品でもあるけどね。 調べると湖上舞台は80年の歴史を持つらしい。 これだけの激しい内容をキャストやスタッフが難なく熟しているのがここからも理解できる。 おっ!と驚く楽しい舞台だった。
*ブレゲンツ音楽祭2024