■能楽堂十一月「寝音曲」「蝉丸」

*国立能楽堂十一月普及公演の□2舞台を観る.
□狂言・大蔵流・寝音曲■出演:大藏教義,大藏基誠
□能・観世流・蝉丸(替之型)■出演:上田拓司,上田公威,大日方寛ほか
■国立能楽堂,2024.11.9
■「寝音曲(ねおんきょく)」。 謡の巧い太郎冠者は主人の前では謡いたくない。 毎回謡わせられるからだ。 しかし主人の膝枕の上でリズムに乗って気持ちよく謡ってしまう。 酒を呑む豪快な場面が楽しい。
プレトーク「蝉丸の謎・蝉丸の能」(佐伯真一解説)を聴く。 「百人一首の坊主めくりでは蝉丸は坊主か否か?」から始まり「世の中はとてもかくても同じこと宮も藁屋も果てし無ければ」を百人首と比較する。 そして「後撰和歌集」「新古今和歌集」「今昔物語」「無名抄」等々から「最初は盲目ではなかった」「途中から帝の皇子になった」など蝉丸説話の成り立ちを追う。
「蝉丸(せみまる)」は舞踏的な作品である。 蝉丸が登場する時はいつもドキドキする。 今日はそれほどでもなかった。 輿舁(こしかき)が蝉丸にピタリとへばり付いていなかったからである。 歩行姿も大事だ。 席も良くなかった。 クリ・サシ・クセで逆髪と蝉丸を正面から見ることができなかった。 動きのない二人の姿をじっくりみたい。 姉と弟の再会と別れの物語は表面的である。 美しい詞章と舞踏的な動と静が全てである。 両シテは声を含め動きも似ていた。 調べたら兄弟だった。