■象
■作:別役実,演出:EMMA(旧・富永純子),出演:阿部一徳,牧山祐大,榊原有美ほか,劇団SPAC
■静岡芸術劇場,2024.12.7-15
■先日の「正三角関係」に書いたが今年は原爆関連の舞台が多い。 今回も主人公が被爆者です。
不条理劇とあったがシュールも詰まっていた。 これが冴えていました。 別役実の舞台が面白いと思ったことは少ない。 科白や動き、その余白が計算され尽くしていないことが多いからです。 今日の舞台はこれらをクリアしていましたね。 広い舞台のため役者の入退場でリズムが乱れたが、それ以上に若さ溢れる別役舞台を十分に楽しめた。
背中がケロイドで覆われた主人公の新興宗教に嵌まったかのようなギラギラ感が印象的でした。 戦後の過剰な人間関係を持つ主人公の体に、被爆者への差別が徐々に沁み込んでいく。 そしてジメッとした薄暗い病院へ看護婦や妻がシュールを運んでくる。 患者たちの遣り切れなさが漏れてきます。 シュールは不条理の材料でしょう。
チラシ「被爆者の悲劇は不条理を求める」(大沢真幸)を帰りの新幹線で読む。 「・・悲劇は神の定めたこと。 ・・だから(観客は)主人公に英雄としての尊厳や崇高を感じる」。 被爆は神が与えた使命なのか? 現実の悲劇を受け止めるのに不条理劇がある、と言う。 悲劇と不条理劇の関係に納得です。
この作品は深津篤史演出で観ていました。 別役実の毒気にあてられて深津特有のシュール感を出せなかったが、近未来的に描いたことで不条理劇にまとめ上げたと記憶しています。
*SPAC2024シーズン作品