■品川猿の告白

■原作:村上春樹,演出:マシュー・レントン,出演:那須凛,サンディ・グライアソン,伊達暁ほか,劇団:ヴァニシング・ポイント
■神奈川芸術劇場・大スタジオ,2024.11.28-12.8
■原作は読んでいない。 これが良かった。 謎を持つ展開にドキドキしました。 謎とは名前の不思議です。 観ながら「ゲド戦記」が脳裏に浮かぶ。 「海辺のカフカ」の舞台も同様だった。
知能を持った猿が愛する人間女性を獲得する為に彼女らの名前を盗む。 盗まれた女性たちは自分の名前を忘れてしまう。 猿にとってはプラトニックラブですが、一つの愛の形でしょう。
村上春樹の舞台はいつも凝っている。 下手をすると解説になってしまうからです。 細かい詰めが必要です。
それを乗り越えた今日の舞台は素晴らしかった。 スタッフが2年半の歳月をかけただけはあります。 人物や道具の移動は無理無駄斑がない。 謎解きカウンセラーも出しゃばらない。 猿の演技も楽しい、特に尻尾がいい。 温泉宿も雰囲気が伝わってくる。 下水道の澱んだ空気に響くブルックナーの異様さもです。 二か国語も気にならなかった。 一番は背景にスモッグを利用していることでしょう。 人物たちが異界(煙の中)からやってきて異界(煙の中)へ帰っていく。 これこそ舞台の醍醐味です。
終幕、みずきと母の関係は衝撃的でした。 村上春樹舞台のクライマクスは文学的です。 脳味噌が先ずは優先する。 身体は後回しだが、これも悪くはない。