■つばめ

■作曲:G・プッチーニ,指揮:スペランツァ・スカップッチ,演出:ニコラ・ジョエル,出演:エンジェル・ブルー,ジョナサン・テテルマン,エミリー・ポゴレルツ他
■東劇,2024.6.1-6(メトロポリタン歌劇場,2024.4.20収録)
■初めて観る作品なの。 期待を持って映画館へ向かう。 舞台は19世紀末の分離派ウィーンを感じる、衣装もね。 でも1920年代のパリらしい。 場面はサロンからカフェ、そして避暑地へと移る。
歌唱を心地よく聴くためのストーリー構造だわ。 ドラマを隠しているからよ。 裏は非日常だが表は日常を、それも疑似的に描いているの。 匿名じみた人物たちはどこか不安が漂っている。 歌詞・歌唱も「愛」の表面をなぞっていくだけ。 でもプルニエとリゼットの一時の笑いがそれを和ませてくれた。
指揮者のインタビューで謎が解ける。 ウィーンからのオペレッタ依頼に変更を加え、第一次大戦さなかの1917年に完成した作品らしい。 「ドビュッシーの印象主義」を掲げていたが「ほろ苦い人生」「振り返る人生」をこの作品は表現している。 普段を整いながらも舞台に漂う雰囲気は大戦の影響からきていることも分かる。
高級娼婦と純心青年の物語だが「椿姫」と比較されるのが痛い。 公演回数も少ない。 心の旅路を歌った燕は静かに身を移すの。 「・・海を渡って飛んでいく。 夏の明るい国へ。 そして再び戻ってくる・・」。  「プッチーニのエレガントで洗練されたオペラ」はじわっと効いてくるわね。
*METライブビューイング2023シーズン作品