■能楽堂十月「舟渡聟」「天鼓」

*国立能楽堂十月普及公演の□2舞台を観る.
□狂言・和泉流・舟渡聟■出演:三宅右近,三宅右矩,三宅近成
□能・観世流・天鼓(弄鼓之楽)■出演:梅若紀彰,高澤祐介ほか
■国立能楽堂,2024.10.12
■「舟渡聟(ふなわたしむこ)」は聟入りする男が祝儀の酒を持って乗船するが、酒好きの船頭にせがまれて仕方なく酒を飲ませてしまう。 家に通されると、舅が船頭だった! 舅の失態を描くが、二人が謡と舞で締めるところに舞台的な感動が出ている。
「天鼓(てんこ)」は地謡のゆっくりした基調から律動的な後場の舞楽まで、一貫性のとれた流れが気持ちよい。 子を亡くした父の思いが迫ってくる。 舞楽ではリズムが合ったせいか舞踊特有の恍惚感に浸ることができた。
小書「弄鼓之楽(ろうこのがく)」は前半でシテの心情を省き、舞では太鼓が入りシテがのびやかに舞い遊ぶ。 今日の舞台は期待以上の内容だった。 シテ面は「小牛尉(こうしじょう)」から「童子」へ。
プレトーク「鼓が結ぶ親子の縁」(宮本圭造解説)を聴く。 ・・世阿弥と長男元雅の関係を「天鼓」に繋げた小林静雄の話は現代では否定されている。 「天鼓」は創作能の位置づけと考えてよい。 星は月と違い不気味なモノとして日本では扱われた。 逆に星に愛着の強いのが中国である。 七夕の彦星織姫の別れが「天鼓」に反映されている。 この別れが江戸時代の近松門左衛門や歌舞伎義経千本桜の初音の鼓へ繋がっていく。 ・・。 楽しい話が一杯だった。