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■能楽堂四月「重喜」「野守」

*国立能楽堂四月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・重喜■出演:山本東次郎,山本則匡,山本則秀ほか □能・喜多流・野守■出演:長島茂,原大,山本則孝ほか ■国立能楽堂,2025.4.12 ■プレトーク「八面玲瓏(はちめんれいろう)、鬼神の鏡」(原田香織)を聴く。 速い流れで解説が進む。 世阿弥はもとより、新古今和歌集や雄略天皇のこと、額田王と光孝天皇の歌、大峰八大金剛童子への展開、等々。 この分野に慣れていないと話についていけない、が刺激的な解説だった。 「重喜(じゅうき)」とは何か? ここでは僧侶になりたての新発意(しんぼち)の名前である。 僧侶の名に多いらしい。 子方である重喜が住持の頭を剃るのでハラハラしてしまう。 地謡も入る。 トークの初めに「教誡律儀(きょうかいりつぎ)」の話があったが、この教えが舞台をより面白くしていた。 「野守(のもり)」は長閑な春日野から鏡を一転させると天上そして地獄界までが出現する。 何度観ても飽きない。 今日のシテは前場の静から後場の動へ、どちらの動きも存在感が出ていた。 橋掛りを歩く姿もぶれていない。 十分に堪能した。 面は「三光尉(さんこうじょう)」から「小癋見(こべしみ)」へ。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2025/7001/

■能楽堂四月「腰祈」「歌占」

*国立能楽堂四月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・腰祈■出演:大藏彌右衛門,大藏章照,大藏彌太郎ほか □能・金春流・歌占■出演:山中一馬,島袋元寿,則久英志ほか ■国立能楽堂,2025.4.9 ■「腰祈(こしいのり)」は山伏修行を終えた孫が祖父の曲がった腰を治す話。 孫の法力が効き過ぎてしまった!? 「歌占(うたうら)」は父子再会物語である。 そして伊勢神道の父が地獄へ落ちた時の様子を語り「地獄の曲舞」を舞う。 中世神仏習合の死生観は仏教のため浄土信仰の八大地獄が描かれる。 「世阿弥が嫌った地味な男物狂」を彼の実子・観世十郎元雅が当作品としてまとめ上げたらしい。 当時の仏教的地獄はずっと身近だったはず、でも現代はそれが迫って来ない。 シテ面は「今若(いまわか)」の色白で「・・地獄の苦しみにかやうに白髪となりて候」の髪は金髪にみえる。 現代的なシテの曲舞から地獄は遠い。 また地謡の出番が多い。 難解な謡と舞のため出演者の苦労が感じられる舞台だった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2025/7000/

■能楽堂三月「袴裂」「武文」

*国立能楽堂三月特別企画公演の□2舞台を観る. □狂言・「天正狂言本」と古画による・袴裂■出演:野村又三郎,奥津健太郎,奥津健一郎 □能・復曲新演出・武文■出演:金井雄資,金井賢郎,宝生欣哉ほか ■国立能楽堂,2025.3.28-29 ■「袴裂(はかまさき)」は2年前に当劇場で観ている。 割いてしまった袴を二人が着けて舞う場面は笑ってしまった。 「武文(たけぶん)」は能より歌舞伎に近い。 いや、能が70%歌舞伎30%かな? 狂言方の比重が高いのが一因だが、程良いバランスだと思う。 20場面から構成されている。 前半はスピード感が半端でない。 火事場まで一直線だ。 早送りで観たような後味が残る。  複雑な内容を75分に巧くまとめ上げたのは企画演出の賜物だろう。 このあたりは「「武文」改訂について」(横山太郎)に書かれている。 クライマクスは終場の鳴門海上だ。 「・・手向けの衣の恨めしながらも、懐かしや」。 霊になっても迷う武文の心模様がジーンと迫ってくる。 船中の場では舵取の行動が目立った。 松浦某に少し分けてやりたいくらいだ。 役者たちは切れ味のある動きと声だった。 囃子も場面を盛り上げていた。 満足度は100%! 面はツレが「孫次郎」、後シテは「木汁怪士(きじるあやかし)」。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/3128/

■NHKバレエの饗宴2025

■指揮:井田勝大,管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 ■NHK,2025.3.23(NHKホール,2025.2.1-2収録) *下記の□6作品を観る. □「白鳥の湖」第2幕 ■振付:マリウス・プティバ,レフ・イワノフ,演出:三谷恭三,音楽:P・チャイコフスキ-,出演:秦悠里愛,小池京介,米倉太陽ほか,舞団:牧阿佐美バレエ団 □「ラ・シルフィード」からパ・ド・ドゥ ■振付:オーギュスト・ブルノンヒヴィル,音楽:レーヴェンスヨルド,出演:前田紗江,中尾太亮 □イサドラ・ダンカン風のウラームスの5つのワルツ ■振付:フレデリック・アシュトン,音楽:J・ブラームス,出演:佐久間奈緒,ピアノ:佐藤美和 □「椿姫」から3つのパ・ド・ドゥ ■振付:山本康介,音楽:F・リスト,出演:中村祥子,厚地康雄,ピアノ:佐藤美和 □「ロメオとジュリエット」バルコニーのパ・ド・ドゥ ■振付:ケネス・マクミラン,音楽:S・プロコフィエフ,出演:高田茜,平野亮一 □コンサート ■振付:ジェローム・ロビンズ,音楽:F・ショパン,出演渡辺恭子,林田翔平,中川郁ほか,舞団:スターダンサーズ・バレエ団,ピアノ:本田聖嗣 ■重量級の「白鳥の湖」を最初に持ってくるとは! 調子が狂ってしまった。 部分上演のため演目は吟味したほうがよい。 「ラ・シルフィード」の中尾太亮が若さを発散していましたね。 「椿姫」が一番気に入りました。 山本康介の振付が効いていた。 ストーリーもメリハリがあった。 ダンサーの二人も物語的に似合っていた。 衣装も良い。 「コンサート」は初めて観る作品です。 コメディバレエとは珍しい。 楽しく締めることができました。 *NHK、 https://www.nhk-p.co.jp/ballet/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、NHKバレエの饗宴 ・・ 検索結果は8舞台 .

■影のない女

■原作:フーゴ・フォン・ホーフマンスタール,訳:高橋英夫,演出:倉本朋幸,出演:寺中友将,清水みさと,山井祥子ほか,劇団オーストラ・マコンドー ■吉祥寺シアター,2025.3.24-31 ■役者の声が耳に入るが即すり抜けて霧散してしまう。 集中して聴かないと言葉の意味さえ蒸発していく。 戸惑いました。 詩小説を朗読している感じだが、その言葉は役者身体の奥から発していない(ようにみえる)。 棒読みに聞こえる場面が多々ある。 これが違和感の原因でしょう。 また組体操のような動きを入れてくる。 チェルフィッチュが微妙な動作で科白と身体の関係に迫るのとは違い、これが科白と役者の解離を一層大きくしてしまった(ように思える)。 ところで、ガラス張りで薄緑や薄青色に変化させる舞台床が映えていました。 そこに船を浮かべた場面は素晴らしい。 鷹の鳴声も舞台を引き締めていた。 後半、リズムがでてきて照明も忙しくなり盛り上がってきましたね。 この作品はオペラで観ています。 が、演劇は別物かもしれない。 チラシに「森鴎外が名訳を残した巨人ホーフマンスタールの深淵に迫る」と書いてある。 でも、深淵に入り込むことは残念ながら叶いませんでした。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/363351

■アレグリア

■振付:カデル・アトゥ,音楽:トム・ウェイツ,レジス・バイエ・ディアファン,舞団:アクロラップ ■NHK,2025.3.10-(パリ・シャイヨー宮,2019.11.26収録) ■「ヒップホップ・バレエ」とあったが初めて聞く言葉です。 しかしバレエには見えない。 強引に結びつけようとした言葉に聞こえる。 8人のダンサーが10数場面を展開している。 基調はブレイクダンスです。 繋ぎには規則性ある振付が多い。 それは子供を真似たように走り回り、またゲーム感覚を持ったダンサー同士の振付が多い。 後半、音楽の位置づけがはっきりしてきましたか? 途中に歌唱(録音)も入る。 これは日本語訳が欲しいですね。 床段差や布を使って波のように利用する場面もあり飽きさせない。 フランス的なところが見え隠れするのが気に入りました。 ヒップホツプダンスは上演を増やして欲しいところです。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/K9ZLW6L3PL/

■アイーダ

■作曲:ジョゼッペ・ヴェルディ,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,演出:マイケル・メイヤー,出演:エンジェル・ブルー,ユデット・クタージ,ピュートル・ペチャワ他 ■東劇,2025.2.28-3.13(メトロポリタン歌劇場,2025.1.25収録) ■インディー・ジョーンズの世界が出現? 幕開きに目を疑ってしまった。 ファラオの世界を探検家と「アイーダ」を平行して描いていくようだ。 前者はエジプシャンブルーで空間を染めていて、これは気に入ったが、しかし観ていて物語への集中力が落ちる。 生舞台でない為とも言える。 しかも探検家がエジプト財宝を奪っていくような描き方をしている。 演出家は凝り過ぎてしまった。 探検家オギュスト・マリエットのことはともかく、重量級の舞台は始まりから飛ばしていく。 歌手も重量級が多い。 力強い空気が舞台隅々まで広がっていく。 何回観ても痺れる。 衣装も素晴らしい。 将軍ラダメス役ペチャワも角が取れてきた。 なかでも光っていたのは王女アムネリス役ユディット・クタージ。 インタビューで当役を60回近く歌ってきたと話していた。 演じなくてもアムネリスが舞台に出現していた。 エンジェル・ブルーもエチオピア王女が「地」で似合う。 都会と田舎の対決かな? ところで凱旋場面に動物たちは登場しなかった・・! よくあるのだが。 今回はダンスが中心に置かれている。 私は気に入ったが、これは賛否両論があるだろう。 そして終幕、地下牢でラダメスとアイーダは息を引き取る。 この終わり方はいつ観ても寂しい。 華麗で力強い前半とは対極にある。 もう少し捻ったストーリーにすればテンションが落ちないのだが。 ヴェルディは普仏戦争勃発で終わり方を書き急いだのかもしれない。 *METライブビューイング2024作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/6005/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、マイケル・メイヤー ・・ 検索結果は3舞台 .

■能楽堂三月「八句連歌」「恋重荷」

*国立能楽堂三月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・八句連歌■出演:山本東次郎,山本凛太郎 □能・観世流・恋重荷■出演:観世恭秀,坂井音雅,福王茂十郎ほか ■国立能楽堂,2025.3.8 ■「八句連歌(はちくれんが)」は借金の催促問答を連歌に込めた話である。 「連歌は中世最大の流行文芸」と解説にあったが当時の町民文化の質の高さが窺われる。 借手が連歌に長けていたので借金証文は破棄される。 これをみて借手は連歌と関係が深い天神信仰である菅原道真に感謝して終わる。  「恋重荷(こいのおもに)」は庭掃除の老人(シテ)が白河の女御(ツレ)に叶わぬ恋をする物語である。 シテ・ワキ・ツレ、それに地謡のバランスが良い。 全体の構成が整っている舞台だ。 切れ味がある動のシテと静のツレの対比も面白い。 老人の期待・不安・執念を描くのだがこれら感情表現が巧く抽象化できていた。 「阿古父尉(あこぶじょう)」から「重荷悪尉(おもにあくじょう)」へ面は替わるがどちらも恋から掛け離れている。 しかし違和感が無い。 感情を抽象化して昇華できた為である。 舞台芸術の醍醐味と言えるだろう。 ツレは「小面」。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/3124/

■能楽堂三月「口真似」「三山」

*国立能楽堂三月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・口真似■出演:善竹忠重,善竹忠亮,善竹十郎 □能・観世流・三山■出演:観世銕之丞,観世淳夫,宝生常三ほか ■国立能楽堂,2025.3.5 ■口真似と言えば昨年末に「 察化(さっか) 」を観ている。 「口真似(くちまね)」も太郎冠者が主人の真似をする話だが冠者に諄さを感じる。 「・・主人の命を逆手にとり、口真似をする鸚鵡ではない自分を楽しむ」と解説にもあったが、冠者の行動が自己ループに陥り他者への広がりが見えないからだろう。 「三山(みつやま)」は一人の男と女二人の三角構造を持つ。 結局は一人が捨てられてしまう。 女たちの執念が凄まじい。 霊になっても現世に現れ互いに罵り合っている。 しかし最期は「後妻打ち(うわなりうち)」を果たし晴れて二人は消えていく。 能の一般型に準じた流れだが見処は女二人の争いと和解だろう。 ここは滅多に観ることができない。 劇的とは違った面白さがあった。 この作品は万葉集「香久山は畝傍ををしと耳梨と相あらそひき、神世よりかくにあるらし、・・、うつせみも嬬を争ふらしき」(天智天皇)を下敷きにしている。 面はシテが「曲見(しゃくみ)」、ツレが「小面」。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/3121/

■賭博者

■原作:F・M・ドストエフスキー,作曲:C・プロコフィエフ,指揮:ティムール・ザンギエフ,演出:ピーター・セラーズ,出演:チェン・ペイシン,アスミク・グリゴリアン,ショーン・パニカー他,演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ■NHK,2024.12.2-(ザルツブルク・フェルゼンライトシューレ,2024.8.12・17収録) ■幕開きから歌手たちは精神が高ぶっている。 オペラでは珍しいくらいの演劇的演技が続く。 加えてカメラは歌手のアップを多用する。 この過剰な演出は何だ!? 明暗の強い赤色系の照明に映像画面が染まっている。 この緊張ある舞台は何だ!? 主人公アレクセイや恋人ポリーナの意図も捕らえることができない。 観ていても厳しい。 終幕も近い後半、空飛ぶ円盤のようなルーレットが天井から降りてくる。 賭博に挑むアレクセイの大勝する場面が凄まじい。 ここで多くの謎が解ける。 舞台は、初めから終わりまで、この賭博の緊張が拡散していたのだ。 この張り詰めた充満はドストエフスキーと演出家ピータ・セラーズのコラボ成果と言ってよい。 投げられ回転しているボールの行方を見つめるあの短い時間に沸き起こる極限へ向かう高揚感が全ての歌手に塗り込められていたのだ。 *ザルツブルク音楽祭2024作品 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/ZW6V3Z25NJ/

■能楽堂二月「老松」「弓矢太郎」「雷電」

*国立能楽堂二月企画公演の□3舞台を観る. □舞囃子・金剛流・老松(紅梅殿)■出演:金剛永謹,金剛龍謹ほか □狂言・和泉流・弓矢太郎■出演:野村万蔵,野村万之丞,小笠原由祠ほか □復曲能・雷電(替装束)■出演:宝生和英,宝生欣哉,野口能弘ほか ■国立能楽堂,2025.2.28 ■舞囃子「老松」は能の舞事部分を面・装束を付けずに紋付袴姿で演ずる。 ツレの紅梅殿が真ノ序の舞、シテ老松がイロエ翔リを舞う。 「弓矢太郎」は前半と後半に分かれ狂言にしては長い。 臆病な太郎を驚かそうとした天神講の頭である当屋が逆に驚かされてしまう話。 出演者も8人と多い。 「雷電」は比叡山座主の法性房と菅原道真の霊の再会と対立を描く。 道真は後場の動きが鋭い。 シテ面は「三日月」から「筋怪士(すじあやかし)」へ。 今日は菅原道真特集であった。 しかし昨晩の寝不足がたたり舞台に集中できなかった。 残念! *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/2108/

■ハンマー

■振付・美術・照明:アレクサンダー・エクマン,音楽:ミカエル・カールソン,出演:エーテボリ歌劇場ダンスカンパニー ■NHK・配信,2025.2.17-(スエーデン・エーテボリ歌劇場,2022.12.7・10収録) ■NHKは2023年放映の当作品を再び配信している。 振付家アレクサンダー・エクマンの7月初来日に合わせたのかな?、と言うことで早速観ました。 彼の振付は初めてです。 ・・幕が開き、ダンサー30人が揃って動き回っているが、舞台の広さが並みでない。 ちょっとした運動場でしょう。 床は一対の大きな男女の顔写真が引き伸ばされて張ってある。 いつのまにか衣装を纏ったダンサーたちが思い思いに駆け巡り踊りだす。 まるで子供の遊戯を大人化したような振付です。 そしてダンサーたちは客席に侵入しだす!、それも客の頭越しにです。 客と会話をしたり写真を撮りあったりする。 ダンサーは再び舞台に戻り前半が終わります。 後半、舞台の床が黒光りに反射するなか、ダンサーたちは黒衣装とサングラスをかけてパントマイムのような動きをバラバラとやりだす。 次にテレビのバラエティショーが始まりトークやコントを入れる。 その後ブロック片を持ち出し積み木のように積み上げたり崩したりする。 ハンマーで鐘をたたき、再び揃って動き回り幕が下りる・・。 何でも有りですね。 舞台や客席そして観客を十二分に活用している。 ダンス界の寺山修司ですか?  広い空間を使い熟せる振付家です。 2024年パリ・パラリンピック芸術監督兼振付を担当しただけはあります。 初来日が楽しみですね。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/Z82LQ3N8NW/

■ソウル・オブ・オデッセイ Soul of ODYSSEY

■作・演出・振付:小池博史,古代ギリシャ叙事詩「オデュッセイア」より,音楽:サントシュ・ロガンドラン,太田豊,出演:リー・スイキョン,今井尋也,池野拓哉ほか ■スズナリ,2025.2.22-28 ■・・テレマコスは母を故郷に残し父オデセウス探しの旅に出る。 そしてオデセウスの帰還で終わるが、海神ポセイドンや魔女キルケ、怪物スキュラとの戦い、冥界巡りなどが途中で語られ演じられていく・・。 「オデュッセイア」を知らなくても楽しめる。 それはクラウンらしき3人の進行役がときどき登場してト書きを喋り解説を入れるからです。 役者たちの母語は北京語・広東語・マレー語・英語・日本語と多彩です。 しかも全員が顔を白塗りで覆っているので多言語が溶け合い直截に耳に届く。 ダンサー出身の役者も多い。 このため身体重視に傾いている。 躍動的です。 特にオデセウス役リ・スイキョンはヨガ・太極拳・気功で迫ってくる。 今井尋也の能楽と呼応して舞台を引き締めます。 航海上の嵐で使う十数台の扇風機を回す装置が楽しい。 得意な映像はいつもより絞っています。 演奏も舞台両脇に陣取る。 総合芸術としての完成度は見事です。 しかも誰にでも開かれた舞台でした。 子供たちが観ても楽しめるでしょう。 *小池博史ブリッジプロジェクト *第35回下北沢演劇祭参加団体 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/355901 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、小池博史 ・・ 検索結果は13舞台 .

■能楽堂二月「吹取」「生田敦盛」

*国立能楽堂二月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・吹取■出演:大藏彌太郎,大藏教義,善竹大二郎ほか □能・観世流・生田敦盛■出演:山階彌右衛門,武田慶秀,福王知登ほか ■国立能楽堂,2025.2.22 ■「吹取」は2年前に当劇場で観ていた。 すっかり忘れていた。 妻定め物だが粗筋を読んで思い出す。 笛も入り、しっかりした舞台構成のため上演が多いのだろう。 「生田敦盛」の作者金春禅鳳は初めて観る。 なるほど、いつもの舞台とは違う。 仔細な情は形で表す、例えば敦盛と息子の再会と別れ等々に。 そして場面切替に濁りを残さない。 つまり歯切れが良い。 変化球ではなく直球で攻めてくる。 但しシテの発声は抑えないと棒読み風になってしまう。 今日は囃子も地謡も巧い。 作品に同期していた。 面は「十六中将」。 小書「替之型」とあったが急遽取り止めになってしまった。 つまり<カケリ>から通常演出の<中ノ舞>で舞うことになる。 前者は修羅の苦しみと息子再会の焦燥を表し、後者は親子再会の喜びを表す、ここに違いがあるらしい。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/2110/

■能楽堂二月「千鳥」「隅田川」

*国立能楽堂二月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・千鳥■出演:茂山七五三,茂山宗彦,茂山千五郎 □能・喜多流・隅田川■出演:塩津哲生,塩津希介,宝生常三ほか ■国立能楽堂,2025.2.19 ■「千鳥」は主人の命で酒を買いに行った太郎冠者と、ツケ残のある客に酒を売りたくない酒屋主人との駆け引きが見所。 二人は合口(話の合う仲良し)という設定もミソ。 尾張津島祭が話題になるが、そこでの「千鳥を捕らえる子供の遊びをまねる」場面が題名の由来らしい。 「隅田川」は京から遥かに遠い最果ての地だ。 此岸と彼岸の境界であるこの地で母子が再会する。 しかし「・・絶望的な悲劇を書きながら、救いのない荒涼たる晩秋や厳冬ではなく、大自然の慰めと生命力に満ちた時季に設定した点にも、元雅の作意が窺える」(村上湛)。 梅若丸の命日は2025年は4月13日である。 境界上の武蔵野の原風景を行ったり来たりしながら観てしまう作品である。 シテの動きを見て不安が過る。 科白はしっかりしているので途中から気にしなくなったが。 面は「曲見(しゃくみ)」。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/2109/

■ポルノグラフィ/レイジ

■作:サイモン・スティーヴンス,翻訳:小田島創志,高田曜子,演出:桐山知他,出演:亀田佳他,土井ケイト,岡本玲ほか ■シアタートラム,2025.2.15-3.2 ■前半の「ポルノグラフィ」は2005年ロンドン爆破事件前後の市民生活を7つのオムニバス形式で描いています。 ロンドンの地名が次々と耳に届きますね。 でも頭に描いた地図上のここだ!と指し示すことができない。 NTライブは欠かさず観ているが、実はロンドンには長らく行っていない。 事前に地図をじっくり眺めておけば良かったと科白を聴きながら悔やみました。 今もそこの風景が浮かぶからです。 原作に忠実な舞台です。 読んでいないが、目をつむり科白を聴いているとそう感じます。 科白に同期した生活の音や街の騒音が微かに聴こえる。 これがとても効いている。 コーヒーやクロワッサンの香りも漂ってくる。 でもそこで生活していないと心身が反応しない。 ロンドンは遠い街になってしまった。 後半の「レイジ」は大晦日の英国の一都市が舞台のようです。 祭り騒ぎのなか、警官と市民の小競り合いが起こる。 前半と後半は連続しているようにみえる。 爆破事件を冷静に見届けた市民が大晦日でどんちゃん騒ぎをする。 これがロンドンの生活だ!と言っているようです。 ところで街の地下にできた穴は何の象徴でしょうか? 3時間15分は長い。 前半は静かな緊張、後半が騒がしい緊張で疲れました。 疲れた理由の真意、それは<芝居の面白さ>が感じられないからです。 たぶん真面目過ぎるのかもしれない。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/16041/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、サイモン・スティーヴンス ・・ 検索結果は3舞台 .

■円環 ENKAN

*以下の□3作品を観る. ■さいたま芸術劇場・大ホール,2025.2.7-9 □過ぎゆく時の中で ■演出:金森穣,音楽:ジョン・アダムス,衣装:堂本教子ほか,出演:金森穣,Noism ■・・一人の男がゆっくりと舞台を横切っていく。 そこを全速力で走り抜けるダンサーたち。 「新潟競馬場の直線コースを駆け抜ける競走馬」のように。 歩く男はダンサーを呼び止め関係を持ち始める。 その後ダンサーたちは輪になり男を囲み幕が下りる・・。 速度ある動きと小刻みな音楽が同期していて気持ちが良い。 2021年作らしい。 「円環」とは何か? 舞団の結束する姿が現れている。 衣装はシンプルだが、いつものように決まっています。 舞台の隅々まで演出家の気配が沁み渡っています。  □にんげんしかく ■演出:近藤良平,音楽:内橋和久,衣装:アトリエ88%,出演:Noism ■・・舞台には大小のダンボール箱が置いてある。 それがモゾモゾと動き出す。 中からダンサーたちが現れる。 彼らは何語?かを喋り箱を叩き踊りまくる。 お互い挑発もする。 楽しい舞台です。 もちろん衣装もです。 彼らは再び箱に入り幕が閉じる・・。 近藤良平らしい振付です。 彼は緊張感溢れる作品が多いNoismを別世界へ引きずり込もうとした。 これは成功したようです。 □宙吊りの庭 ■演出:金森穣,音楽:尊室安,衣装:鷲尾華子,出演:井関佐和子,山田勇気,宮河愛一郎,中川賢 ■・・胴体だけのマヌカンが舞台に置いてある。 3人のダンサーが登場しマヌカンと共に踊り出す。 マヌカンの服を脱がせてダンサーが着たり、その逆もある。 絡み合いながら複雑な振付が続いていく・・。 動きの中に充実した人生がみえる。 大人のダンスと言ってよい。 気に入りました。 ゲストの二人も存在感がある。 満足度120%です。 *劇場、 https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/101564/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、金森穣 ・・ 検索結果は37舞台 .

■マクベス

■作:ウィリアム・シェイクスピア,演出:マックス・ウェブスター,出演:デヴィッド・テナント,クシュ・ジャンボ,カル・マカニンチ他 ■吉祥寺オデオン,2025.2.5-(ドンマー・ウエアハウス,2024.1収録) ■ムリムダムラの無いスピーディな展開です。 早送りで観ているようです。 魔女の予言を信じる、と言うよりは、命令です。 マクベスは命令として受け取り、深く悩み迷うが体がどんどん動いていく。 これがスピード感を増幅しています。 役者も巧い。 シェイクスピアの科白も加速度を付けてビシビシと決まっていますね。 5mx7mの何も無い白い平面の舞台を縦横無尽に動き回る。 暗くてよく見えないが3方が客席のようです。 役者たちは時々カメラを意識する。 観客がいてもです。 しかも観客はヘッドホンを付けている・・? 録画の為の特別舞台・・? シェイクスピアのチャンバラ劇はこの手の演出が近頃多い。 ナショナル・シアター(NT)も同様でしょう。 英語を母語とする観客はどう観ているのか分かりませんが、しかし心身に直接迫る演劇的感動は少ない。 咀嚼し直してから、やっぱり本場は凄い!と頷く感動でしょう。 *映画com、 https://eiga.com/movie/103130/

■さまよえるオランダ人

■作曲:リヒャルト・ワーグナー,指揮:マルク・アルブレヒト,演出:マティアス・フォン・シュテークマン,出演:松位浩,エリザベート・ストリッド,ジョナサン・ストートン他,合唱:新国立劇場合唱団,管弦楽:東京交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2025.1.19-2.1 ■シュテークマン演出の同舞台はこれで3度目、もちろんこの劇場でね。 その為かワーグナーの真髄を乗せた歌唱が心身の奥底まで響いてくる。 当たり障りが無く巧すぎる演奏が逆にワーグナーを際立たせたのかも。 どう転んでも、ワーグナー最高!  オランダ人役エフゲニー・ニキティンが気管支炎のため河野鉄平に代わったことが当劇場理事から事前説明がある。 前回のコロナ下、2022年1月公演のオランダ人が河野鉄平だったことは憶えている。 でも今日はパワーが全開しているようにはみえなかった。 ドイツ語も馴染んでいない。 緊急出演でしょうがないかな? でも、そこは流石に新国劇、総合力でカバーしていた。 アクシデントはあったが十分堪能できたわよ。 ところで、この作品は能楽にしたら似合うかもしれない。 新作能「彷徨阿蘭陀人」! そう思いながら観てしまった。 *NNTTオペラ2024シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_029080.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、シュテークマン ・・ 検索結果は4舞台 .

■何時までも果てしなく続く冒険

■作・演出:額田大志,出演:矢野昌幸,佐山和泉,薬師寺典子ほか,劇団:ヌトミック ■吉祥寺シアター,2025.11.17-19 ■舞台にシンセサイザー、ギター、ドラムが並ぶ。 音楽劇に近い? ・・若者が事故でなくなってしまう。 友人や家族が亡くなった人との近傍を語る。 些細な日常の行動や会話を、です。 それは時間的に空間的に、近くにそして遠くへ行き来する。 楽譜を展開するかのように物語は繰り返す。 そこに亡霊も加わる・・。 絶え間ない演奏が役者に寄り添いながら物語に染み込んでいく。 語りはラップ調に近い。 これは発声ダンスと言ってよい。 舞台全体が一つの音楽作品のように立ち現れます。 演出家の舞台は初めて観たが音楽と演劇の新しい結合にもみえる。 相乗効果があったのか?よく分からない。 退屈な日常の連続の流れの為かもしれない。 でも日常から非日常を出現させることは可能です。 このタイプの舞台公演は少ないので今後も楽しみですね。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/352079 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、額田大志 ・・ 検索結果は2舞台 .

■エドワード・シザーハンズ Edward ScissorHands

■原作:ティム・バートン他「シザーハンズ」,演出:マシュー・ボーン,音楽:テリー・デイヴィス,ダニー・エルフマン,衣装:レズ・ブラザーストン,出演:リアム・ムーア,アシュリー・ショー,ケリー・ビギン他,舞団:ニュー・アドベンチャーズ ■Bunkamura・ルシネマ渋谷宮下,2024.12.27-2025.1.16(ウェールズ・ミレニアム・センター,2024.3収録) ■ティム・バートンのおとぎ話をマシュー・ボーンがダンスにした! さっそく渋谷へ観に行きました。 主人公エドワードはロボット、ここは御伽噺のため人間そっくりの<人形>だが、なんと両手はハサミです。 ・・舞台は1960年前後の米国の雰囲気ですか? 当時の中産階級の生活が漫画チックに描かれる。 街の住民はカラフルな住宅と芝生の庭そして自動車を所有し、休日はテニスにゴルフにドライブ、食事や宗教行事を家族やパーティで楽しむ。 そのような共同世界に入り込んだ純粋な心を持ったエドワードは次第に住民と軋轢が生じてくる・・。  刃物を振り回すので舞台、特にダンスは合わない。 もちろんハサミは木製(?)だが踊り難いのは確かです。 その場面ではハラハラしました。 住民のダンスは<フロリダ万歳>の雰囲気がでていましたね。 そして音楽がエドワードの心に両立している喜びと悲しみを巧く表現していた。 この作品の原作(映画)は観ています。 今日の舞台はティム・バートンとジョニー・ディップへのオマージュ作品でしょう。 マシュー・ボーンは童話をよく採用するが、ハサミを振り回すので心身への心地良さがやってこない。 映画はまだしも、やはりダンスに刃物は曲者です。 *映画com、 https://eiga.com/movie/102885/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、マシュー・ボーン ・・ 検索結果は7舞台 . *映画は1990年にアメリカで制作され監督がティム・バートン,主演はジョニー・ディップ.  映画com、 https://eiga.com/movie/14029/ *購入したプログラムに脚本担当のキャロライン・トンプソンが「フランケンシュタイン物語を軸にした・・」と書いているが納得.

■能楽堂一月「翁」「蛭子大黒」「海士」

*国立能楽堂一月定例公演の下記□3舞台を観る. □素謡・金春流・翁■出演:金春憲和,中村昌弘,本田芳樹ほか □狂言・大蔵流・蛭子大黒■出演:大藏基誠,大藏彌太郎,善竹忠重ほか □能・観世流・海士(懐中之舞)■出演:浅見重好,武田智継,殿田謙吉ほか ■国立能楽堂,2025.1.7 ■「翁(おきな)」は素謡らしい。 翁と千歳それに地謡が登場する。 「とうどうたらりたらりら、たらりららりららりどう・・」。 まじないのようだが・・?、五穀豊穣・国土安穏を祝う。 次の「蛭子大黒(えびすだいこく)」は蛭子と大黒天が登場し自身の由緒を語り舞い、宝物を人に与える。 どちらも新年に相応しい。 「海士(あま)」は龍宮から宝珠を取り返した海士とその子藤原房前(ふじわらのふささき)の母子再会物語である。 その背景には藤原氏にまつわる伝説がたくさん貼りついている。 加えて法華経の影響がとても強い。 海士である母が宝珠を取り返す場面は躍動感にあふれていた。 房前が法華経を読誦すると龍女となった母は成仏して幕が下りる。 房前が子方のためか母子の絆を一層深めた。 シテ面は「深井」から「泥眼」へ。 バラエティに富んだ3作品で観応え十分だった。 お年玉をもらった気分だ。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/1412/