■能楽堂五月「布施無経」「雲林院」
*国立能楽堂五月企画公演の以下の□2舞台を観る.
□狂言・大蔵流・布施無経■出演:山本東次郎,山本則重
□能・世阿弥自筆本による・雲林院■出演:梅若紀彰.片山九郎右衛門,観世喜正,舘田善博ほか
■国立能楽堂,2025.5.20
■「布施無経(ふせないきょう)」は仏事の布施を忘れている施主に住持が遠回しに催促する話である。 やはり布施が欲しい!でも、施主に素直に言えない・・。 執着の末の自尊心や人間関係が壊れていく住持の虚脱感が並みでない。
「雲林院(うんりんいん)」は在原業平と二条后高子の愛の逃避行を描く。 終幕、二人は后の兄藤原基経に見つかってしまう。 これらは芦屋公光の夢の中で語られる。
追い詰められた虚脱感が業平に漂う、「布施無経」の住持と理由は違うが身体状況は同じようなものだろう。 面は在原業平が「中将」、藤原基経の「邯鄲男」、二条后は「増(ぞう)」を付けたが、この状況下に合う表情が三人に現れていた。 基経にみえる潔白感が物語の泥まみれを消している。
「業平と二条后が作り物の塚の中へ戻る」から「橋掛かりへ退く基経と二条后を、業平が舞台から見送る」へ演出が変更になったらしい。 この変更が業平と高子の愛と別れを高めた。 橋掛かりで二条后は振り向き業平と目を合わせる。 ・・。 この時、一直線上に居る公光とも目が合う。 公光は業平と一体化していたのか? また、今まで忘れていた公光の存在感も意識した。 夢という劇中劇を現前化する演出が加わったとも言える。 面白い舞台だった。
*月間特集・在原業平生誕1200年公演
*「能を再発見する」公演