■ラクリマ、涙
■作・演出:カロリーヌ・ギエラ・グェン,出演:ダン・アルテュス,ディナー・ベリティ,ナタ-シャ・キャッシュマン他,製作:ストラスブール国立劇場
■静岡芸術劇場,2025.5.4-6
■「オートクチュールの燦めき」からファッション業界の話のようです。 そして「ラクリマ」とは涙の意味です。
パリにある有名メゾンが英国王妃のウェディングドレス製作を受注する。 この案件を成し遂げるためノルマンディー地方アランソンのレース工房、インドの州都ムンバイの刺繍工房を含め3つの拠点で物語が転回(展開)していきます。
製作過程では多くの法令・規制を順守しなければいけない。 登場する組織はみな零細企業?と言ってよい。 このためか製作途中で納期厳守や人員確保などに綻びがでてくる。 厳しいですね。 製造業で働く人からみると身につまされるでしょう。
舞台は映像を多用して3拠点を上手に飛び回る。 やはり映像の力は強い。 画面を見る度合いが高くなります。 生身の役者が薄くなる。 テレビ会議など通信技術も駆使するので尚更です。
ここが要ですが経営者や従業員の家族を舞台に持ち込んでくる。 つまり製作・会社・家族で発生する多くの問題を絡ませて物語が進んでいきます。 比重は4:3:3ですか? ほぼ均等で配分が絶妙です。
しかも各問題を具体的に出してくる。 しかも味が濃い。 ちょっと濃すぎるかな? 演出家のインタビューを読むと、「北による南の支配、上司による部下の支配、男性による女性の支配、特権階級による庶民階級の支配・・」とある。 でも企業と家族を接近させ過ぎて混乱する場面があった。 仕事中にそこまで家族らが押し寄せるか!?
国家と企業、企業と企業、企業と家族、家族と個人・・。 この組織関係の上に支配関係を重ね、困惑したところもあったが、渦巻く関係を整然と巧くまとめていました。
雨も降っているGW最後の今日。 帰りの新幹線は遅くなるほど混むはず。 プレトークは聴いたが、アフタトークは聴かないで劇場を後にする。
*SHIZUOKAせかい演劇祭2025