■能楽堂五月「業平餅」「右近」
*国立能楽堂五月定例公演の□2舞台を観る.
□狂言・和泉流・業平餅■出演:野村万之丞,野村萬蔵,炭光太郎,野村万禄ほか
□能・宝生流・右近■出演:今井泰行,金井賢郎,朝倉大輔,御厨誠吾ほか
■国立能楽堂,2025.5.14
■タイトルロールの如く今回も業平尽くしが続く。 「業平餅(なりひらもち)」は参詣途中の業平一行が餅屋でひと騒動起こしてしまう話である。
一行が大人数で華やかな気分だ。 そのなかの傘持ちが道化役を引き受ける。 餅屋主人の対応から業平は歌人ではなく女好きとして世間で通っているのが分かる。 業平の裏面が見えて楽しい。 現代ならハラスメントになりそうな娘への対応も狂言ではときどき見受けられる。
「右近(うこん)」は幕開けからテンポが速い。 ワキが足早に登場したのには驚く。 大鼓の元気の良さが目立つ。 太鼓も入る。 この忙しさもシテの登場で少し落ち着いたが。
ワキである鹿島神職が業平と重ね合わさって見えたか? そうは見えない。 前シテに神へ向かおうとするベクトルが強いからだと思う。
ツレが共に二人だと華やかさが出る。 ワキ3人とツレ2人が微動だにしない中、シテが舞う場面は舞踏的な存在感が漂う。 この華麗な存在群は能が持つ特権だろう。 面はシテが「泣増(なきぞう)」(是閑作)、ツレは「小面(こおもて)」。
*月間特集・在原業平生誕1200年公演.