■能楽堂六月「悪坊」「玉井」
*国立能楽堂六月定例公演の以下の□2舞台を観る.
□狂言・大蔵流・悪坊■出演:茂山逸平,茂山宗彦,茂山七五三
□能・復曲能・玉井(間狂言・大藏流貝・貝尽)■出演:宝生和英,田崎甫,辰巳和磨,野口能弘,(山本東次郎,山本則孝,山本凛太郎)ほか
■国立能楽堂,2025.6.4
■「悪坊(あくぼう)」は反社会的行為で人々を苦しめている悪坊が心を改めて僧になる話である。 当時は宗教も職業も生活に溶け込み分節化されていない。 生活身体から湧き出る意志で将来を決める。 僧になるにもひとっ飛びだ。 雁字搦めの現代では自由に飛び回ることができない。 羨ましい時代を描いている。 心が洗われる舞台だ。
「玉井(たまのい)」は昔話の「海彦山彦」である。 「浦島太郎」も思い出す。 今回は間狂言「貝尽(かいづくし)」が入り楽しい舞台になっている。 まさに童話の世界だ。
衣装と面に凝った6人の貝の精を含め、シテ方の豊玉姫と玉依姫、龍王と天女、ワキ方の彦火々出見尊(ひこほほでみのみこと)と従者たちは総勢12名になる。 贅沢な舞台だ。 先日の「賀茂物狂」に続き、ふたたび至福のひとときを過ごせた。
面は豊玉姫「泣増」(龍右衛門作)、龍王「冠形悪尉(かんむりがたあくじょう)」,玉依姫「小面」(近江作)、天女「小面」(是閑作)。 後場、豊玉姫と玉依姫の優美な中ノ舞ではふくよかな表情の面が似合っていた。