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■アドリアーナ・ルクヴルール

■作曲:フランチェスコ.チレア,指揮:ジャナンドレア.ノセダ,演出:デイヴィッド.マクヴィカー,出演:アンナ.ネトレプコ,ピュートル.ベチャワ,アニータ.ラチヴェリシュヴィリ他 ■新宿ピカデリー,2019.2.22-28(MET,2019.1.12収録) ■フランチェスコ・チレアの作品は初めてよ。 18世紀パリ、コメディ・フランセーズの人気女優アドリアーナ・ルクヴルールとザクセン伯爵マウリツィオは恋仲だが、大貴族ブイヨン公妃も伯爵に恋心を抱いている。 ・・。 アンナ・ネトレプコとアニータ・ラチヴェリシュヴィリのぶつかり合いが見ものね。 二人は重量級だし・・。 両者に挟まれる伯爵役ピョートル・ベチャワも年季が入っているので不足無し。 ネトレプコは2年ぶりに見るけど体が引き締まった感じだわ。 インタビューでも「役になりきっている」と言ってたけど、「フェードル」の台詞も喋れて楽しそう。 この作品は感情表現の多い三角関係物語だからもっと上演されてもよい作品かも。 でも役者が揃えられるかが問題のようね。 劇中劇が頻繁にあり芝居好きにはワクワクする舞台になっていた。 特に3幕「パリスの審判」の劇中劇のダンスは最高! 美術も衣装も素晴らしい。 MET総合力の成果と言ってよい。 *METライブビューイング2018シーズン作品 *作品、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/857/

■紫苑物語

■原作:石川淳,台本:佐々木幹郎,作曲:西村朗,指揮:大野和士,演出:笈田ヨシ,美術:トム.シェンク,衣装:リチャード.ハドソン,照明:ルッツ.デッペ,出演高田智宏,大沼徹,清水華澄,白木あい他 ■新国立劇場.オペラパレス,2019.2.17-24 ■迷ったが原作は読まないで観ることにした。 舞台美術はなかなかの出来だ。 剥き出しの機材と不穏な抽象的色彩そして中国風衣装が混じりあい物語の嵐を予見する。 主人公宗頼は父との確執や妻うつろ姫への嫌気から「弓」へと心が移っていく。 「弓の世界」とは武道と捉えてよいのだろうか? 「歌」や「弓」の<世界>には踏み込まないので何とも言えない。 多くの事象や行為も同じだ。 主人公宗頼が紫苑を植えさせることや千草との愛のやりとりでもそれは言える。 ナールホド納得感やドッキドキ感がくっ付いて来ない。 言葉少ない歌詞が物語の核心を歌わないからである。 歌唱は身体動作を補佐しているにすぎない。 面白そうなSF話も多い。 たとえば狐の化身、陰陽師の登場、3本の魔矢、鏡像と仏、世界の崩壊等々しかし、これがツマラナイ漫画を読んでいる感じだ。 たぶん物語に詰め込む内容が多過ぎて処理できなくなったことが原因だろう。 それも取り込んでからではなくて取り込む前で止まってしまったようにみえる。 東京都交響楽団はこの劇場では珍しい。 金管楽器が華麗に響く。 作品編成の為か? 物語に沿った演奏は美術や照明と共鳴して聴きごたえがあった。 歌唱はオノマトペやコロスを多く取り入れ苦心の跡がうかがわれる。 しかし婚礼の場などコロスはバカ騒ぎの域を出ていない。 これがうつろ姫の演技を大袈裟にしてしまった。 場面切替の黒子の作業は機械とは違った良さが出ていた。 今このブログを書きながら原作を読もうか再び迷いだした。 シックリ来なかったからである。 *NNTTオペラ2018シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/asters/

■実験舞踊「R.O.O.M」 ■「鏡の中の鏡」

■演出:金森穣,出演:池ヶ谷奏,浅海侑加,チャン.シャンユー,ジョファオ.ボブラヴスキーほか,舞踊団:Noism ■演出:金森穣,出演:井関佐和子,金森譲 (以上作品名順) ■吉祥寺シアター,2019.2.21-24 ■舞台は四方銀色の壁に覆われ数枚のタイルの開閉でダンサー達は出入りします。 天井からは落ちるように舞台に入ってくる。 広さは幅15m奥10m高2mくらいでしょうか? 「R.O.O.M」は10名前後のダンサーたちが動き回るのでとても窮屈です。 床を意識する振付でジャンプなどはできません。 四方の壁に縛られている感覚です。 でもダンサーは無表情で踊りまくる。 二作品とも同じ舞台美術を使います。 但し「鏡の中の鏡」は半透明の鏡が奥壁に納まっている。 「鏡・・」はデュオなので空間に余裕がある。 二人は苦しんでいる。 視線が合わない。 作品前者は肉体、後者は精神に枷をはめている。 タイトルに実験とあるように次への試行錯誤にもみえる。 演出家の挨拶を読んで概要がわかりました。 「ROOM」は普遍的身体への開発、「鏡の中の鏡」は組織活動の活性化を目指しているようです。 結成15年を経て新しい何かに期待が高まります。 *劇場、 http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2018/11/noism2019.html

■銀河鉄道の夜  ■コントロールオフィサー

■原作:宮沢賢治,作・演出:平田オリザ,出演:菊池佳南,折舘早紀ほか,青年団 ■作・演出:平田オリザ,出演:中藤奨,梅津忠,大竹直,伊藤毅ほか,青年団 (以上作品名順) ■駒場アゴラ劇場,2019.2.15-3.11 ■「銀河鉄道の夜」は星の数ほど観てきたけど少しも飽きない。 舞台は色とりどりの大きな積み木が置いてあり園児の遊び場のようだわ。 2011年のフランス国内巡演で子供たちに見せる為に創られたらしい。 役者もそれに合わせた演技だが核心部分はしっかり入っている。 子供たちのいじめ問題から、他者を思うとは?幸せとは?そして死とは?を考えさせられる。 「コントロールオフィサー」が何であるかを知らないで観たから楽しさが倍増したわよ。 正式名はDCO(ドーピング・コントロール・オフィサー)。 オリンピック予選水泳大会等でのドーピング検査員を指す。 要は選手のオシッコを検査する人ね。 選手たちが水を飲んで尿を溜めるまでのあいだ世間話に花を咲かせる舞台なの。 彼らの話のネタや間の取り方で笑い続ける30分の短編作品。 *平田オリザ演劇展vol.6 *劇団サイト, http://www.seinendan.org/play/2018/12/6708

■マクガワン・トリロジー

■作:シェーマス.スキャンロン,翻訳:浦辺千鶴,演出:小川絵梨子,出演:松坂桃李,浜中文一,趣里,小柳心,谷田歩,高橋恵子 ■DDD青山クロスシアター,2019.2.12-15(世田谷パブリックシアター?,2018年収録) ■昨年見逃してしまった一本です。 渋谷で上映していたので行ってきました。 アイルランド共和軍IRA所属ヴィクター・マクガワンがベルファストのバーで仲間を拷問しようとする場面から1幕は始まる。 主人公ヴィクターのテンションの高さが目立ちます。 そして拷問や死刑が軍法から外れているにも関わらずヴィクターは仲間たちを殺していく・・。 二幕はヴィクターが一人の女性を射殺する話です。 彼の旧友である女性の拘束理由は最初分からなかったが英軍兵士を助けた為らしい。 ヴィクターからみると規則違反とのこと。 一幕の彼の科白とは逆ですね。 これから一幕より時間が遡っているように見える。 この場に及んでの彼女の文学的科白の違和感が気になります。 そして三幕は病院?の一室に変わる。 主人公の母の部屋らしい。 そこへヴィクターが追われてくる。 二人は昔話をするが噛み合わない。 最後にヴィクターは母に睡眠薬を飲ませ殺してしまう。 この3幕は時系列的に1幕と2幕の間の出来事とみました。 彼は母と出会ったため狂暴になって1幕を向かえるのでしょうか?  主人公の興奮度に高低差があるのは混乱します。 第二幕が始まったときに編集ミスではないかと思ってしまったくらいです。 しかも役者たちはいかにも芝居をしているような動きと喋りです。 アイルランド軍の現在意義、軍の裏側、組織内暴力が身体的に理解できない。 スタッフ・キャストは何とかしなければと藻掻いているようにもみえます。 あくまでも新鮮さが第一の作品ですね。 *作品、 http://www.mcgowantrilogy.com/

■RE/PLAY Dance Edit

■演出:多田淳之介,振付.出演:シェリダン.ニューマン,ソポソ.ソー,カリッサ.アデア,ジョン.ポール.オルテネロ,きたまり,岩渕貞太,Aokid,斉藤綾子 ■吉祥寺シアター,2019.2.9-11 ■2011年版「 再/生 」の衝撃的舞台を思い出したので再び観ることにした。 出演者がダンサーに代わっている・・。 そして何もない舞台で8名のダンサーが踊りはじめる、初めはゆっくりと。 音楽も繰り返し流れる。 次第にダンサーの動きは激しくなっていく。 途中ダンサー達が仕事のことなどを話す。 そして再び激しく踊りだす。 ・・。 ダンサーが疲れてきたときに、 意味は無意味になりダンサーと観客の身体が一体となるような感覚に陥る。 解放される身体とでも言うのだろうか。 そして、ダンサーが疲れ切ったときに、 身体が崩れていく過程を見続けることにより感覚とは無縁な非日常的な身体が忽然と現れてくる。 劇的な身体とでも言うのだろうか。  2011年版は芝居の役者が踊ったはずだ。 振付は酷いもので腰を振り振り手足をフリフリするだけだった。 しかしその舞台は「解放される身体」と「劇的な身体」の両方が立ち現れた。 今回はそれが現れなかった。 この作品は演劇とダンスが融合しないと感動が湧き起こらないのかもしれない。 途中の会話も不発だった。 <再び生まれる>には意味も意識も昇華し向こう側に飛ばなければならない。  *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/97088

■僕らの力で世界があと何回救えたか

■脚本.演出:高羽彩,出演:大久保祥太郎,斉藤マッチュ,松澤傑ほか,タカハ劇団 ■下北沢.小劇場B1,2019.2.8-14 ■インターネット時代にアマチュア無線部を登場させるとは驚きました。 舞台が進むとその理由が分かってきます。 無線は<声>がすべてだからです。 ラジオと違って双方向でもある。 <声>は想像力を膨らませる。 しかもスマホ→パソコン→マイコン組立→アマチュア無線局開設→ラジオ制作という20世紀後半の中高生オタク派にまで遡っていくことができる。 エレキ系硬派オタク史の重みがあります。 高校の無線部リョウタの素粒子研究施設反対運動を遡っていくストーリーは面白い。 施設がブラックホールを研究していること、それがマンデラ・エフェクト現象を引き起こしていることなど緊張が途切れない。 しかしSFの強力な混在で結末が分解してしまった。 リョウタを見失ってしまいました。 社会問題にもう一歩踏み込まなかったからでしょう。 その意味で「・・置き去りにされたのは僕らだったのかもしれない」と言えます。 役者達の演技に力強さがありました。 場面ごとの事象・事件・キャラクターに味が出ていた。 一つ一つの場面の緊張感を楽しむのがこの芝居の観方でしょう。 *タカハ劇団第15回公演 *CoRichサイト、 https://stage.corich.jp/stage/96836

■タンホイザー

■作曲:R.ワーグナー,指揮:アッシャー.フィッシュ,演出:ハンス.ペーター.レーマン,美術:オラフ.ツォンベック,出演:妻屋秀和,トルステン.ケール,リエネ.キンチャ他 ■新国立劇場.オペラパレス,2019.1.27-2.9 ■雪ならキャンセルと決めていたけど降らなかった。 ラッキー! ・・水晶宮のような冷たさの有る舞台はこの劇場らしい美術だわ。 ヴェーヌスベルクには合うけどヴァルトブルクはどうかしら? 日本語字幕は緻密で硬さが前面に出ていた。 ドイツ系はこれでないとだめ。 ゲーテやトーマス・マンを読むときは特に翻訳者を意識するのと同じよ。 タンホイザー役トルステン・ケールの落葉広葉樹林の乾いた木々を感じさせる歌唱は聴いた覚えがある。 調べたら「 死の都 」・・、2つの作品はどこか通じている。 でも彼の動作は日常性が目立ち過ぎる。 身体そのものの存在感を出してほしい。 演出家のタンホイザー像かしら? 此処一番はエリーザベト役リエネ・キンチャかな。 彼女の歌唱と役柄が見事に一致して物語に吸い込まれてしまった。 MET「 タンホイザー 」のような劇的さが無かったのはNNTTの智的さが出過ぎたからだと思う。 まっ、これも悪くない。 観たあとのカタルシスはいつもの通り「ワーグナー最高!」よ。 *NNTTオペラ2018シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/tannhauser/

■アルルの女  ■ベートーヴェン交響曲第九番

■Bunkamura.オーチャードホール,2019.1.31-2.3 □アルルの女 ■振付:ローラン.プティ,指揮:井田勝大,出演:益子倭,毛利実沙子,舞団:Kバレエ,演奏:シアター.オーケストラ.トーキョー ■舞台背景の農村風景や天井はP・ゴーギャン風で簡素に描かれている。 女性ダンサー衣装は質素な女学生の制服にみえる。 男性も似たような衣装。 振付や動きも地方農村で開催するフォークダンスのようだわ。 安っぽいけど長閑な雰囲気がいいわね。 後半はゴーギャンからR・マグリット風窓絵に替わったけどサッパリし過ぎかしら。 フレデリは小粒だけどヴィヴェットとお似合いよ。 でも終幕は息切れをしていた(ようにみえた)から力をつけなきゃ。 この作品は<アルルの女>がどういう女であるか良く分からない。 「カルメン」の影に隠れてしまう理由かも。 それと音楽の優位性もある。 その演奏は次第に上げ調子になり物語を牽引していた。  □ベートーヴェン交響曲第九番 ■振付:熊川哲也,指揮:井田勝大,出演:熊川哲也,舞団:Kバレエ,歌唱:幸田浩子,山本耕平,諸田広美,坂本伸司,藤原歌劇団合唱部,演奏:シアター.オーケストラ.トーキョー ■第一楽章「大地の叫び」と第二楽章「海からの創世」は対になっているの。 それは男性ダンサーの激しさと女性ダンサーの穏やかさ、赤と青の色調・・、それよりも手の先までを見せびらかし身体全てがウキウキするような振付は楽しい。 ベートーヴェンと共振してミニマム世界に没入できる。 そして第三楽章「生命の誕生」は3組のデュオが生命を感じさせる動きで前2章と対にしている。 このネストを含めた構成と内容はシンフォニック・バレエとして完璧で言うことなし。 次の第四楽章「母なる星」はちょっと硬い。 合唱団数十名を舞台に登場させたので動きが取れなくなったのね。 体育会系のようなダンスになってしまった。 でも合唱付きを聴けるとは幸せ。 そして熊川哲也も登場して<鋼鉄の仕上がり>をみせてくれた。 *劇場、 http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/franchise/20190131.html

■顕れ-女神イニイエの涙ー

■作:レオノーラ.ミアノ,翻訳:平野暁人,演出:宮城聰,音楽:棚川寛子,出演:鈴木陽代,美加理,阿部一徳,劇団:SPAC ■静岡芸術劇場,2019.1.14-2.3 ■女神イニイエに使えるカルンガ役阿部一徳が観客に向かって理解できたか?と質問する。 それだけ分かり難い物語構造で始まります。 アフリカの神々を知るための忍耐が前半は必要ですね。 しかし奴隷貿易に加担したアフリカ人加害者を裁く場面で一転する。 以降は心身が解放されたように舞台に集中できます。 それは被害者と加害者を越えた人間の救済を描くからです。 加害者を裁く作品は多いのですが裁いた後のことが語られない。 演出家の言葉「・・人間に関わることで私に関係のない事は一つもない。」の全方位性がその続きを描けたのだと思います。 観終わって「鎮魂のための祝祭音楽劇」とチラシに書いてあったことに納得しました。 それにしても作者のメッセージ力は強い。 終幕に神々の演説に近い場面があるが演出家が上手くまとめていました。 宮城聰演出の苦労した痕跡が随所にみられる舞台です。 これがまた深みを与えていた。 神を演ずるときのスピーカー(語り手)とムーバー(動き手)の分離は強力に作動しますね。 そして打楽器の演奏がアフリカを一層近づけてくれました。 *パリ.コリーヌ国立劇場共同制作作品 *劇場、 https://spac.or.jp/au2018-sp2019/revelation_2018

■高丘親王航海記

■原作:澁澤龍彦,演出:笠井叡,意匠:榎本了壱,出演:笠井叡,黒田育世,近藤良平ほか ■世田谷パブリックシアター,2019.1.24-27 ■この幻想冒険譚をダンスで表現するとは驚きである。 原作を読んでおくのが条件かもしれない。 はたして語り手の声が聞こえて安心した。 ・・大きな張り子の船が舞台を滑るところから物語は始まる。 もちろん乗ることができる。 船から降りると舞台上が船上になり陸になる。 ダンサー衣装はそれぞれのキャラクターに合わせているので凝っている。 親王とその付添を除き儒艮(ジュゴン)や大蟻喰(アリクイ)等々は子供劇場の姿だ。 振付もそれに合わせている。 大きな張子の虎も終幕に登場する。 しかし笠井叡の動きは年齢を感じさせるが振付は変わらない。 オイリュトミストもいつもの動きにみえる。 モーツァルトを中心にドイツ・リートを聞いているとやはり舞踏世界だ。 しかし黒田育世、近藤良平、酒井はなたちはいつもと違う感じがする。 混合型振付と言ってよい。 前半は方向性が定まっていなかったが、声明?が聴こえるなか「親王の心に死の意識が忍び込み始めて」から笠井叡と高丘親王そして澁澤龍彦を一つに重ね合わせることができた。 ダンスでは女性陣のソロ場面がとても良かった。 今回は語り手が喋る手法を取ったが字幕にしたほうが物語展開が分かり易かったとおもう。 しかも語り手の声にスピーカを使ったので手作り感を減少させてしまった。 この冒険譚をダンスにするのは冒険だったが、笠井叡と澁澤龍彦との出会いの大きさは十分伝わってきた。 *「 高丘親王航海記 」(天野天街演出,2018年) *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/20190124kasaiakira.html

■沓手鳥孤城落月  ■楊貴妃

■作:坪内逍遥,演出:石田耕土,出演:坂東玉三郎,中村七之助ほか ■作:夢枕獏,出演:坂東玉三郎,市川中車 (以上作品名順) ■東劇,2018.1.12(歌舞伎座,2017.10・12収録) ■豊臣家滅亡つまり中世日本の閉幕場面は科白の楽しさに先ずは酔うことができた。 大阪夏の陣、落城寸前の千姫逃亡場面から始まる。 そこへ淀が登場して逃亡を阻止するが徳川の密偵と軍勢に囲まれて最早どうすることもできない。 秀頼が登場し母淀を刺し自害しようとするが・・。 淀の徳川家への恨みの激しさに堪える作品である。 彼女の科白に憎き千姫の名前が終幕近くまで聞こえてくる。 愛情構造が現代と違うのは分かるが千姫は秀頼の妻である。 しかもこの作品は豊臣時代終わりの頁の1行だけを描いている。 このため終幕の母子の情愛が迫って来ない。 秀頼誕生の頃からの豊臣史をじっくり楽しんでいないと作品の面白さが味わえない。 秀頼役中村七之助のキリッとした存在感が目立った。 舞踊「楊貴妃」は中国衣装(?)の楊貴妃坂東玉三郎が素晴らしい。 振付も両国折衷に見える。 ゆったりとした時間が過ぎていく姿はなかなかである。 *シネマ歌舞伎第32弾 *作品サイト、 https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/39/

■マーニー Marnie

■原作:ウィンストン.グレアム,作曲:ニコ.ミューリー,演出:マイケル.メイヤー,指揮:ロバート.スパーノ,出演:イザベル.レナード,クリストファー.モルトマン他 ■東劇,2018.1.18-24(MET,2018.11.10収録) ■事務手続きのような歌詞、機械的動きと速さある場面転換、単色系衣装の通勤服、・・この日常の形式優位な舞台に歌唱と演奏が被さるとテンポのある心地よさが伝わってくる。 A・ヒッチコック映画の欠点を取り除いた面白さがある。 映画では精神疾患のマーニーをいつも意識し、夫ラトランドの精神分析医のような演技に馴染み過ぎていた。 この舞台にはそれが無い。 マーニーの多重人格をロボットのように演じて形の面白さとして消化している。 鮮やかな単色衣装もそれに従っている。 彼女が4人の分身を引き連れているから尚更ね。 そして観客は少しずつ鼓動を速めていくの。 キツネ狩りや落馬場面はダンサーたちの動きが楽しい。 マーニーのトラウマとなっていた殺人理由も終幕の驚きね。 それは水兵ではなく弟だった、しかも・・。 マーニー役イゼベル・レナードは映画も観ていないとインタビューで答えていたがそれは正解よ。 演出家マイケル・メイヤーはショーン・コネリーの影響があると言っていた。 でも夫ラトランドがマーニーと結婚したい普通の男にみえたのは作品に落ち着きをもたらしていた。 内容が複雑なのでブロードウェイの知識・技術を取り入れたようだけどこれがMETの強みだわ。 作曲と演出が上手に統合できた成功例ともいえる。 舞台を観る前には想像できなかった。 映画に縛られていたのね。 すべてが想定外の面白さだった。 *METライブビューイング2018作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/855/

■トロンプ・ルイユ

■作・演出:野木萌葱,出演植村宏司,井内勇希,諫山幸治,加藤敦,山田宏平,小野ゆたか,劇団:パラドックス定数 ■シアター風姿花伝,2019.1.9-14 ■競馬を知らないで寺山修司のファンを名乗るのは気が引けます。 でも知らない観客を裏切らない面白さがある。 それは競馬世界の核心を平易な科白で表現しているからでしょう。 台詞が練れている。 それと馬が喋るからです。 ・・! 役者6人は一人2役で、馬主が、調教師が、厩務員が、予想屋がそれぞれ馬も演じる。 この<人>から<馬>の場面転換がまた素晴らしい。 その逆もです。 つまり馬が喋ることにより物語の急所や裏側に近づくことができる。 子供向けでない舞台で成功しているのは珍しい。 しかも再演だからではなく、作者を含め競馬好きが集まっているとしか言いようがない。 競馬とは何か? この問いに人と馬から答えが語られます。 予想屋は言う。 「馬券を買うのではなく己自身を買うんだ」。 競馬には人生が詰まっていますね。 観客の8割は20代後半の女性ですか。 演出家への信頼が高い証拠です。 ところでタイトル名のここでの意味がよく分かりません。 *パラドックス定数第44項 *CoRichサイト、 https://stage.corich.jp/stage/97216

■ワルキューレ

■作曲:R.ワーグナー,演出:キース.ウォーナー,指揮:アントニオ.パッパーノ,出演:スチュアート.スケルトン,エミリー.マギー,ジョン.ランドグレン,ニーナ.シュテンメ他 ■TOHOシネマズ日比谷,2019.1.11-18(コヴェント.ガーデン,2018.10.28収録) ■一幕「館の内部」は緊張感に満ち溢れ呼吸をするのも忘れてしまった。 歌唱と歌唱の間にも劇的さが現れていたわね。 美術や照明も言うことなし。 音響設備も良かった。 多くのライブビューイングはノッペリした大きな音でどうしようもない。 今回は絞り込んで生の劇場で聴く音に近づいていた。 技術的にはもっと良くなるはずよ。 舞台と客席の距離感を感じさせることも必要ね。 昨年再見のMET「トリスタンとイゾルデ」のニーナ・シュテンメ、スチュアート・スケルトンが登場。 今日のニーナは声に張りがでていた。 船底にいるイゾルデから天空を飛び回るブリュンヒルデに変身したからよ。 そして目に十字傷のヴォータンがまた楽しい。 切傷は曝け出すことで内面の強さと弱さを表現できるの。 眼帯はダメ。 インタビューで「・・この作品はリア王だ」と批評家が言っていたけど3幕のヴォータンは「リア王」以上だった。 全幕を通して現代までを貫く夫婦・親子・兄妹・姉妹の人間関係が濃密で感情豊かに立ち現れていた。 ROHのワーグナーは独特の温かみがある。 *ROHロイヤル.オペラ.ハウスシネマシーズン作品 *映画comサイト、 https://eiga.com/movie/89252/