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■ポーの一族

■作:萩尾望都,演出:小池修一郎,出演:朝美絢,音彩唯,瀬央ゆりあ他,指揮:御崎恵,演奏:宝塚歌劇オーケストラ ■新宿ピカデリー,2026.8.23(宝塚大劇場から中継) ■上演されるたびに可能な限り足を運ぶようにしている作品の一つが、萩尾望都作「ポーの一族」である。 今回は宝塚歌劇団のライブビューイングであったが、雪組トップスター朝美絢がエドガー像を見事に体現し、作品の持つ冷ややかな永遠性と少年の繊細さを両立させていた。 舞台全体も練度が高く、宝塚のレパートリーとしての成熟が確かに感じられた。 吸血鬼=バンパネラの存在を眺めていると、人間という生物の有様を外側から観察する視点が自然と立ち上がる。 血の交換によって子孫を増やしていくバンパネラが「愛とは何か」を問うとき、観客はヒトが抱く愛の本質を逆照射される。 そして、時を旅する不死の彼らが「どこから来たのか、どこへ行くのか知らない」と語る場面では、死という不可思議な現象が静かに胸に迫る。 この作品は、人間が生きていくうえで避けて通れない問いを、寓話の形でいくつも提示してくれる。 カーテンコールでは、この秋に退団する美穂圭子が黒紋付に緑の袴という端正な正装で舞台に立ち、挨拶を述べた。 その姿が舞台全体をさらに華やかに締めくくった。 そして「ポーの一族」が今回もまた記憶に「大切な何か」をそっと刻みつけてくれたのは言うまでもない。 *ライブビューイングジャパン、 https://liveviewing.jp/ponoichizoku2026/

■指輪の力、「ニーベルングの指輪」の150年

■出演:マリナ・フレンク,ヴァレンティン・シュヴァルツ,アンドレアス・ホモキ他 ■NHK,2026.8.3(ドイツ,2026年作) ■作曲家ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指輪」にまつわる一時間のドキュメンタリー映画である。 音楽家や演出家など多くの舞台芸術家が登場し、「指輪」150年の歴史と社会的影響を語る。 先月鑑賞したROH「 ジークフリート 」の演出家バリー・コスキーの姿も映し出され、個人的な鑑賞経験と映画の内容が自然に重なった。 出演者たちの言葉は多彩で、「脇役を作らない、すべてが主役級である」「ヨーロッパの反ユダヤ主義が読み取れる」「各場面が生と死の瀬戸際にある」など、作品の本質を鋭く突く意見が次々と飛び交う。 なかでも興味深かったのは、ハリウッドへの影響である。「スター・ウォーズ」のルークとレイアはジークフリートとブリュンヒルデ、ダース・ベイダーはヴォータン、そしてフォースは指輪に相当するという指摘は、思わず膝を打つ面白さがあった。 過去の舞台映像も紹介される。 1976年バイロイトのパトリス・シェロー演出では労働者階級が主役となり、2022年同劇場のヴァレンティン・シュヴァルツ演出では家族の物語として再構成され、指輪が子どもに置き換えられている。 2023年チューリヒ歌劇場のアンドレアス・ホモキ演出では寓話=御伽噺として描かれ、さらに近年ではAIを用いた新たな「指輪」も制作されているという。 オペラという枠を超え、音楽・演劇・美術を巻き込んだ総合芸術として、時代ごとに新しい「指輪」が生まれ続けていることを改めて実感した。 長年の「指輪」ファンとして、この豊かな変容を目の当たりにできるのは嬉しい限りである。 *美術展ナビ、 https://artexhibition.jp/topics/news/20260726-AEJ2956480/