■能楽堂九月「盆山」「鵺」

*国立能楽堂九月ショーケース公演の二舞台□を観る.
□狂言・和泉流・盆山■出演:野村太一郎,岡聡史
□能・観世流・鵺■出演:角当直隆,則久英志,野村遼太ほか
■国立能楽堂,2026.9.5
■狂言「盆山(ぼんさん)」は<盆栽>の源流を思わせる題材を扱った一曲である。 盆栽を盗みに入った男が家主に見つかれまいと、犬・猿、さらには鯛の鳴き真似まで披露して逃げようとする筋で、動物の模倣が次々と展開する滑稽味が見どころとなる。
能「鵺(ぬえ)」の前場は、まるで起承転結の「承」が抜け落ちたかのように、あっという間に終わった印象を受けた。 季節の変わり目で私自身の集中が揺らいでいたのかもしれない。
気を入れ直して臨んだ後場では、金色の装束をまとって再登場した鵺の激しい所作をしっかりと追うことができた。 面も前場の「怪士(あやかし)」から後場の「猿飛出(さるとびで)」へと替わり、鵺がまさに<蘇生>したかのような迫力があった。
この作品では源頼政の存在が強く前面化している。 頼政の心情はシテである鵺が語り、具体的な動きとして示される一方、鵺自身の心は地謡が担い、抽象的な響きとして立ち上がる。 頼政=具体、鵺=抽象という対構造のため、観客の記憶にはまず具体的な頼政像が刻まれる。 しかし後からじわりと鵺の存在感が浮上してくるところに、世阿弥の構成力の妙がある。
今回はショーケース公演で、能面体験コーナーやプレトーク(川口晃平解説)が設けられていた。 外国人客がいつもより多かったのは、この企画性によるものだろう。