■高丘親王航海記

■原作:澁澤龍彦,演出:笠井叡,意匠:榎本了壱,出演:笠井叡,黒田育世,近藤良平ほか
■世田谷パブリックシアター,2019.1.24-27
■この幻想冒険譚をダンスで表現するとは驚きである。 原作を読んでおくのが条件かもしれない。 はたして語り手の声が聞こえて安心した。
・・大きな張り子の船が舞台を滑るところから物語は始まる。 もちろん乗ることができる。 船から降りると舞台上が船上になり陸になる。 ダンサー衣装はそれぞれのキャラクターに合わせているので凝っている。 親王とその付添を除き儒艮(ジュゴン)や大蟻喰(アリクイ)等々は子供劇場の姿だ。 振付もそれに合わせている。 大きな張子の虎も終幕に登場する。 しかし笠井叡の動きは年齢を感じさせるが振付は変わらない。 オイリュトミストもいつもの動きにみえる。 モーツァルトを中心にドイツ・リートを聞いているとやはり舞踏世界だ。 しかし黒田育世、近藤良平、酒井はなたちはいつもと違う感じがする。 混合型振付と言ってよい。
前半は方向性が定まっていなかったが、声明?が聴こえるなか「親王の心に死の意識が忍び込み始めて」から笠井叡と高丘親王そして澁澤龍彦を一つに重ね合わせることができた。
ダンスでは女性陣のソロ場面がとても良かった。 今回は語り手が喋る手法を取ったが字幕にしたほうが物語展開が分かり易かったとおもう。 しかも語り手の声にスピーカを使ったので手作り感を減少させてしまった。 この冒険譚をダンスにするのは冒険だったが、笠井叡と澁澤龍彦との出会いの大きさは十分伝わってきた。
*「高丘親王航海記」(天野天街演出,2018年)
*劇場、https://setagaya-pt.jp/performances/20190124kasaiakira.html