■高丘親王航海記

■原作:澁澤龍彦,脚本・演出:天野天街,出演:ITOプロジェクト
■ザスズナリ,2018.4.5-10
■ITOプロジェクトは聞いていたがやっと観ることができた。 糸あやつり人形劇である。 パペットではなくマリオネットのほうだ。 キャスト紹介文に「糸は上に引くだけ・・、下に押すことはできない」。 つまり人形は浮遊感を持つ。 これが時空を一瞬に飛び越える天野天街の演出にマッチしたのだとおもう。 挨拶文に「ジカンとクウカンの意図を、そのはみ出したヘソノオの系で切り裂き分断せよ・・」。 その下に地図が載っている。 近江から南へ下り・・、琉球、広州、扶南、海南島、真臘、羅越、南詔、阿羅漢、獅子国・・。 東南アジアの懐かしさが未来へ過去へ行き来する時間に豊かに積み重なっていく。 
天竺を目指す親王(みこ)の死への意識は作者に通ずるらしい。 「天竺を往復する虎に食われたい! そうすれば天竺に行くことができる」。 演出家得意のミニマム映像も空海曼荼羅のように効いていた。 ところで従者の一人秋丸の物語が中途半端だったのは残念。 真珠を飲んでしまっている作者はそこまで余裕がなかったのだろう。
人形はジュゴンやアリクイなどの動物、作者が紹介したハンス・ベルメールの球体関節人形まで登場して華やかである。 顔の表情が固定しているにもかかわらずここまで物語に入り込め時空を飛ぶことができたのは嬉しい。
*CoRichhttps://stage.corich.jp/stage/88461