■エンジェルス・イン・アメリカ、国家的テーマに関するゲイ・ファンタジア

■作:トニー・クシュナー,演出:マリアン・エリオット,出演:アンドリュー・ガーフィールド,ジェイムス・マカードル,ラッセル・トーヴィ他
■東宝シネマズ日本橋,2018.3.16-22他(リトルトン劇場,2017.7.20,27収録)
■3月に第二部「ペレストロイカ」を、今月に入って第一部「至福千年紀が近づく」を観たが、やはり順番通りに間を開けずにみたかった。 一か月も経つと第二部の記憶が薄れてしまう。 しかし8時間の上映は長さを感じさせない。 場面をフェードイン・アウトの映画的手法でまとめ、且つ舞台を分割し共時的に進みながら物語を熟成していく。
1985年頃のゲイ、今はLGBTと一纏めにしているが男性同性愛者たちを主人公にした舞台である。 彼らが治療の困難なAIDSエイズを発症したことで人間関係に底知れぬ不安を招き寄せる。 それは愛や憎しみ信頼や差別も生み出す。
舞台では人種差別や宗教差別が幾度も議論される。 この<多様>なマイノリティが作品の特長を作っている。 例えばモルモン教と他宗教、現代ユダヤ人の位置付けや黒人との関係などなど。 それが政治にも繋がっていくのが面白い。 ロイとピットの共和党やワシントンの話から、トランプ大統領や森友・加計学園問題を思い浮かべてしまった。
ところでLGBTは30年先の時代を歩いているような描き方だ。 他のマイノリティが薄くなってしまうからだろう。 しかし突然のAIDSの発症と死への過程がやはり主役である。
そして物語を飛び越えるのが天使の登場になる。 天使はいつも混乱させてくれる。 日常的身体的に理解できないからである。 祖先や死んだ人の霊の出現なら分かる(気がする)が。 しかも第一部では幕が下りる数秒前で天使が出現したから劇的であった。 第二部を先に観たからそう思う。
当時のAIDSは歴史に登場するペストと同じで決定的威力を持っていた。 キリスト教なら神の使いである天使を登場させないと収まらない。 ゲイ・AIDS・天使は1980年代の裏アメリカを代表する語句かもしれない。
*NTLナショナル・シアター・ライブ2018年作品
*映画com、https://eiga.com/movie/88302/
*映画com、https://eiga.com/movie/88303/