■その人ではありません

■作:別役実,出演:富永由美,土井通肇
■旧眞空鑑アトリエ,2018.4.6-22
■結婚するのはとても易しい、そしてとても難しい。 この芝居では結婚までの過程を男は易しく女は難しく考える。 易しいとは「日常」で、難しいとは「非日常」のような感じだろう。 だから女は考えられないような物理学を日常に適用する。 余計に日常から遠ざかる。
これに別役的不条理とも言える非現実が被さってくる。 日常と非日常はともに現実だが、女はその向こうにある非現実に一歩踏み入れているようだ。 男が訝っているのは女が持っている非日常ではなく非現実である。 これで男は結婚を躊躇う。
女は非現実=狂気との境界を彷徨いながら現実である日常を演技するが非日常まで戻るのが精一杯である。 日常も非日常も受け入れて現実を生きる男の世界に届かない。 そして一緒になりたくてもなれない女の哀しみが舞台に滲み出てくる。
*旧眞空鑑第33回公演