■紫苑物語

■原作:石川淳,台本:佐々木幹郎,作曲:西村朗,指揮:大野和士,演出:笈田ヨシ,美術:トム.シェンク,衣装:リチャード.ハドソン,照明:ルッツ.デッペ,出演高田智宏,大沼徹,清水華澄,白木あい他
■新国立劇場.オペラパレス,2019.2.17-24
■迷ったが原作は読まないで観ることにした。 舞台美術はなかなかの出来だ。 剥き出しの機材と不穏な抽象的色彩そして中国風衣装が混じりあい物語の嵐を予見する。 主人公宗頼は父との確執や妻うつろ姫への嫌気から「弓」へと心が移っていく。
「弓の世界」とは武道と捉えてよいのだろうか? 「歌」や「弓」の<世界>には踏み込まないので何とも言えない。 多くの事象や行為も同じだ。 主人公宗頼が紫苑を植えさせることや千草との愛のやりとりでもそれは言える。 ナールホド納得感やドッキドキ感がくっ付いて来ない。 言葉少ない歌詞が物語の核心を歌わないからである。 歌唱は身体動作を補佐しているにすぎない。 面白そうなSF話も多い。 たとえば狐の化身、陰陽師の登場、3本の魔矢、鏡像と仏、世界の崩壊等々しかし、これがツマラナイ漫画を読んでいる感じだ。
たぶん物語に詰め込む内容が多過ぎて処理できなくなったことが原因だろう。 それも取り込んでからではなくて取り込む前で止まってしまったようにみえる。
東京都交響楽団はこの劇場では珍しい。 金管楽器が華麗に響く。 作品編成の為か? 物語に沿った演奏は美術や照明と共鳴して聴きごたえがあった。 歌唱はオノマトペやコロスを多く取り入れ苦心の跡がうかがわれる。 しかし婚礼の場などコロスはバカ騒ぎの域を出ていない。 これがうつろ姫の演技を大袈裟にしてしまった。 場面切替の黒子の作業は機械とは違った良さが出ていた。
今このブログを書きながら原作を読もうか再び迷いだした。 シックリ来なかったからである。
*NNTTオペラ2018シーズン作品
*劇場サイト、https://www.nntt.jac.go.jp/opera/asters/