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■越境する紅テント、唐十郎の大冒険

■司会:松嶋菜々子,語り:濱田丘 ■NHK・配信,2024.5.27(NHK,2021.2.11作成) ■唐十郎が逝ってしまった。 この追悼映像はドキュメンター形式で3章(司会者は分岐点と言っている)で成り立っている。 1967年8月に花園神社で紅テント初公演。 これが第一の分岐点。 小林薫、大久保鷹、麿赤児、不破万作、根津甚八へのインタビューが続く。 舞台美術の篠原勝之が「唐の手書き台本を劇団員が読み始めると唐本人が感動して泣いていた」「その手書き台本は米粒のような文字で書き損じもなく結末まで一気に書いてあった」。 ・・!! 第二の分岐点は1970年代の戒厳令下での韓国公演から始まる。 記者の菱木一義、作家の村松友視のインタビューが入る。 金芝河と日韓反骨演劇人同盟を設立し「二都物語」をソウルで公演。 続いてバングラディシュ、レバノンのパレスチナ難民キャンプで「風の又三郎」などを公演。  そして中村勘三郎への影響が第三の分岐点。 中村勘三郎は19歳の時から紅テント公演を観ていた。 「紅テントは歌舞伎の原点である」。 平成中村座は紅テントを参考にしたはずです。 唐十郎の言葉と役者身体がシンクロしたとき異次元世界が舞台に出現する。 この<言葉>と<身体>が核融合する唐体験は観客の心に宝として残り続けていきます。 *NHKアナザーストーリーズ運命の分岐点作品 *ステージナタリーwebsite、 唐十郎の大冒険 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、唐十郎 ・・ 検索結果は15ブログ .

■泥人魚

■作:唐十郎,演出:金守珍,出演:宮沢りえ,磯村勇斗,愛希れいか他 ■Bnkamura・シアターコクーン,2021.12.6-29 ■唐十郎作品は台詞に集中しリズムに入り込まないと弾き返されてしまうの。 この作品は入り易いと思う。 でも役者の身体と共鳴しない。 蛍一が中央で動かず科白を喋り続けることが多いから。 それは周囲の大袈裟ないつもの動きとも調和しない。 ブリキ店の床を舞台中舞台にして狭くはしたが、それでも劇場が広過ぎたせいもある。 ブリキ店周囲の美術も目障りだわ。 「風の又三郎」とは違ったアプローチが裏目に出たかな? でもこの広さは初めと終わりの海には効果があった。 それと月影小夜子とヘルパー腰田の声が快く聴こえてきたこともね。 それでも後半は一気に面白くなった。 やすみの熱演が佳境を迎えたからよ。 貯水池の水槽に何人も潜るのはいかにも唐十郎らしさがでている。 でも劇場とのマッチングが悪い。 役者の動きが再び小さくなってしまった。 「下谷万年町」の大きな池とは違い、むしろ水槽が得意の転移21を思い出してしまったわよ。 つまり今日の作品は下北沢の小劇場が似合うということね。 そして科白は唐十郎のいきなり接近してくる言葉で一杯だった。 諫早湾干拓堤防から浦上天主堂、天草四郎、人間魚雷までも、そして義眼から桜貝の鱗へと・・。 「唐十郎の集大成!」とチラシに書いてあったが戯曲としては納得。 やすみ役の宮沢りえは李麗仙の乾いた大陸系の空気を引き継いでいるわね。 *劇場、 https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/21_doroningyo/

■唐版 風の又三郎

■作:唐十郎,演出:金守珍,出演:窪田正孝,柚希礼音ほか ■シアターコクーン,2019.2.8-3.3 ■演出家をみてチケットを購入したの。 金守珍は唐十郎より唐的な世界を作るからよ。 しかも柚希礼音が夢うつつを飛び交う打ってつけの役エリカで登場するし・・。 はたして織部役窪田正孝も少年からの脱皮前を巧く演じていた。 二人の声は劇場空間をきれいに響き切っていたわよ。 科白は照明と音響を道連れに時空を一瞬でジャンプする力を持っている。 これができるのは唐十郎と演出家が密結合しないと実現できない。 今できるのは金守珍しかいないということかな。 オジサン俳優の古い台詞表現で興覚めした場面もあったけど1968年から太平洋戦争まで遡る力には灰汁がある。 「ベニスの商人」や「オルフェウス物語」と珍腐淫腐乱腐の尻に張り付けた菊花紋が混ざり合うと戦後日本の混乱がジワッと滲み出てくる。 終幕、飛行機が空を飛ぶ手の込んだ舞台は逆に想像力が縮むわね。 20世紀前半の語句も多かったから台詞を聞き逃したところがある。 そこははっきり喋ってほしい。 唐十郎の世界へ飛んでく翼は言葉だから。 それでも久しぶりに風の又三郎に出会えた気分よ。 *Bunkamura30周年記念,シアターコクーン.オンレパートリー2019作品 *劇場、 https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/19_kazemata/

■アリババ ■愛の乞食

■作:唐十郎,演出:金守珍,出演:安田章大,壮一帆,伊東蒼ほか ■世田谷パブリックシアター,2025.8.31-9.21 ■唐十郎二本立てを観るため三軒茶屋へ行く。 と、劇場に入って驚いてしまった。 20歳代の女性客が8割近くを占めている。 思わずチケットを確認してしまった。 そこから先日観た「 少女仮面 」の客の多くが高齢者だったことを思い出す。 食う・愛する・産む・排泄する・・。 人間の生きる土台があからさまに舞台にのせられる。 そういう時代があったのだと思い起こさせる。 排泄の成果物まで客席へ投げつけてくる。 戦中戦後世界を詰め込んだ2作品だ。 戦後貧困のなかで女性が子供を産む苦悩、混乱の満州で中国人朝鮮人そして日本人たちの生存への剥き出しな欲望、これらを唐十郎的ロマンで包みシュールに仕立て上げて舞台に現前させていく。 ストーリーが激しく飛ぶので流れに身を任せるしかない。 しかも関西弁だ。 そして唐十郎のテンポは速い。 リズムが合い、初期作品のエキスに出会えた感触を持てた。 演出家の力も大きい。 珍しい作品を舞台にのせてくれた関係者に感謝したい。 ところで今日の客は舞台上からの応答がとても上手かった。 贔屓筋かな? 不思議な客層だった。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/26364/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、金守珍 ・・ 検索結果は14舞台 .

■少女都市からの呼び声

■作:唐十郎,演出:小林七緒,音楽:諏訪創,振付:スズキ拓朗,プロデューサー:流山児祥,出演:山下直哉,原田理央,井村タカオ,山丸莉菜ほか ■SPACE早稲田,2019.12.6-18 ■作品の粗筋はすっかり忘れていた。 でも舞台が始まると記憶より先に懐かしさがやってきたわよ。 「少女仮面」と姉妹のような作品にみえる。 それは氷の帝国へ、そして満州へと繋がっていくから。 そこにガラスの世界がきっとある。 唐十郎が少年期にみた風景が至る所に散らばっている。 しかも舞台は作者世界の荒々しさが出ていた。 演出家にパワーの有るのが分かる。 歌唱や振付は巧過ぎて唐世界から外れてしまっていたけどね。 でも50年の時が混ざり合っている面白さはあった。 田口の指を一本ずつ切り落とす血が妹雪子のガラスの身体に机にベッタリと付いていくのを見ると眩暈がおそってくる。 そしてガラスを擦り付ける金属音はダメ押し! ガラスの子宮と血は交われない。  舞台に緞帳が掛かっていて幕間で繰り広げる寸劇は紙芝居を意識しているはず。 異化効果と次に何が起こるかのドキドキ感を狙っていると思うの。 そして汚れの目立つ地下にある小さなこの劇場が作品に見事合致していたことを付け加えておくわね。 この春に観た「風の又三郎」に違和感があったのは劇場が合わなかったということかな、たぶん。 ということで、今年一番の唐十郎世界に浸れた舞台だった。 楽しかったわよ。 *新進演劇人育成公演俳優部門作品 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/104860

■少女都市からの呼び声

■作:唐十郎,演出:久保井研,唐十郎,出演:稲荷卓央,藤井由紀,福本雄樹ほか,劇団唐組 ■下北沢駅前劇場,2021.1.20-24 ■久しぶりの唐組だ。 しかも劇場公演は珍しい。 ・・シモキタの賑わいは7割程度かな? 70席に減らした場内はほぼ埋まっている・・。 さすが言葉の強さが耳に滲みる。 肉体も活き活きしていた。 昭和を今に甦らせてくれる。 「ガラスよりも透明な観念の結晶を目撃せよ!」。 血肉を昇華した雪子に結晶を見た気分だ。 生の舞台をみるとやはり元気がでる。 映像では観念が結晶にならず浮遊しているだけ。 結晶させるには役者の生の身体が必要なのだろう。 *唐組第66回公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/110561

■少女仮面

■作:唐十郎,演出:中野敦之,出演:椎野裕美子,津内口淑香,丸山正吾ほか,劇団唐ゼミ ■恵比寿・エコー劇場,2025.8.19-24 ■16年ぶりに行くエコー劇場を地図で探した。 場内の雰囲気も椅子の座り心地も覚えていない。 演出家も初めてか? 唐ゼミは観ていたようで観ていない。 これは好きな作品の一つだ。 機会があれば観るようにしている。 さいきんは一糸座の糸あやつり人形劇公演だった。 演出家や劇団で表層には違いが出る、でも深層ベクトルは全てが同じ方向へ向かう。 それは作者の求心力が強すぎるから。 舞台は原作に忠実にみえた。 ・・春日野八千代は演技も歌も落ち着きがあり安心できた。 ボーイも剛直だが動きに切れがあり、目力もあった。 役者たちのコンビネーションも良い。 でも「悲しき天使」は歌い過ぎだろう。 もっと絞り込んだほうがよい。 甘粕大尉はより軍人らしく、帽子は脱がないことだ。 (自慢の禿げ頭はみせなくてもよい)。 防空頭巾女は緊張溢れる演技にすると舞台全体が引き締まる。 仮面は白色系が似合うのだが・・。 いろいろ感想はあるが、それでも久しぶりに唐十郎を堪能できた。 観客は年齢が高い。 劇団が正統派に近い、つまり古典派だからだろう。 昨日は歌舞伎町へゴダール展を観に行ったが、いやー、今日の恵比寿も暑かった。 渋谷川では涼しくならない。 *原団唐ゼミ☆第33回公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/375108

■赤い靴

■作:唐十郎,演出:加藤野奈,出演:福原由加美里,大鶴美仁音,重村大介ほか,劇団唐組 ■下北沢・駅前劇場,2023.2.1-5 ■全速力で飛んでくる科白に撥ねられてしまう。 その言葉に喰らい付いていくと次第にシンクロされて体に溶け込んでいく。 言葉は理解ではなく体で感じ取ることになる。 唐十郎の舞台はいつもこうです。 しかも、この作品は脇道が多い。 四方から次々とやってくる科白をいつも以上に素早くカラダで受け止める。 若手俳優に粗さは有るが複雑なポリフォニーを観ているような舞台です。 久しぶりに言葉と身体が融合していく恍惚感に浸ることができました。 *唐組若手公演第70回公演 *2023都民芸術フェスティバル参加作品 *第33回下北沢演劇祭参加作品 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/227960

■少女仮面

■作:唐十郎,演出:天野天街,出演:江戸伝内,結城一糸,丸山厚人ほか,劇団:一糸座 ■赤坂レッドシアター,2023.3.17-21 ■ゲッコウパレードに続き一糸座も観てきました。 一糸座は糸操り人形、つまりマリオネット劇です。 舞台は複雑な構造をしている。 腹話術師の人形はマリオネットではなくパペット、そして喫茶「肉体」の店員や水飲み男、それに甘粕大尉は、最後にパペットも、俳優が演じる。 しかもマリオネットの人形遣いは黒衣装だが途中に顔をさらす「出遣い」もする。 この複雑舞台を巧くまとめていました。 でも小さいマリオネットを凝視せざるを得ない。 俳優との身長・動作・表情の差に無意識が戸惑います。 観客はこの差を消し去る転換作業が必要になる。 その先に「・・唐っ風吹き荒ぶ、その唐っぽの、傀儡の王国に」観客も迷い込めます。 そして「・・特権的な唐だを張って、喉を唐して、ち唐の限り、唐元気を振り絞り」あのヒースを満州平原を彷徨い歩くことができました。 「」は演出家挨拶文から。 年季の入った役者が多かったですね。 これを含め凝り過ぎた舞台にみえました。 観客は20代以上だが男女・年代がバラけている。 珍しい。 当劇団贔屓筋の特長でしょうか?  *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/233241

■悪役志願

■作・演出:赤澤ムック,出演:黒色綺譚カナリア派 ■座高円寺,2010.8.20-26 ■時代は売春防止法施行の1950年代のようです。 舞台はレトロな感じがでています。 娼婦は明るさが満ちています。 セリフもハキハキした調子で快く響きました。 しかしストーリは途中から予期せぬ方向に進みます。 勤め人ハシと妹テコの結婚式で幕が閉じます。 娼婦たちが去ったあとから戯曲に疲れが出ていてとても残念です。 観劇翌日になんと、赤澤ムックは女性だと知りました。 結婚式の終幕や勤め人ハシに父娘関係が表れているのはこの為でしょうか。  そして美術が新宿梁山泊に似ていると感じたのは唐十郎の系列のためでしょうか。 タイトルの意味がよくわかりません。 すべての役者が悪人も悪役も持っていたように見えたからです。 黒色綺譚を観たのは初めてですが、唐十郎であるカラスの衣を纏ったカナリアのような芝居をする劇団とみました。 *CoRichサイト、 https://stage.corich.jp/stage/21856

■ベンガルの虎

■作:唐十郎,演出:小林七緒,出演:伊藤俊彦,井村タカオ,成田浬,山丸莉奈ほか,劇団:流山児★事務所 ■スズナリ,2022.11.23-28 ■小林七緒演出「少女都市からの呼び声」が面白かったので早速劇場に駆けつけたの。 しかもコロナ感染拡大で昨年中止になった作品でもある。 はたして期待を裏切らない舞台だった。 旧日本軍の遺骨を収集をする生き残った者たちが此岸と彼岸の境界を飛び越えて日本と南方を行き来する壮絶な軌跡。 「ビルマの竪琴」「からゆきさん」などを絡ませながら物語を膨らませていく。 混乱の戦後社会を現前させ、同時に肉体と言葉を融合して劇的な舞台を作り上げていた。 唐十郎が世界へ飛び出した頃の勢いが失われていない。 楽しかったわよ。   *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/195325 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、小林七緒 ・・ 検索結果は2舞台 .

■少女仮面

■作:唐十郎,演出・美術:杉原邦生,出演:若村麻由美,木崎ゆりあ,大西多摩恵ほか ■シアタートラム,2020.1.24-2.9 ■観客層がばらけているのは演出家杉原邦生の賜物かな? 彼は時代劇も結構取り上げているからよ。 会場に入ると未完成な舞台が目に入る。 散らかっている道具類をかたずけながらの幕開きが面白いわね。 そこに壁が下りてきて喫茶「肉体」の店内になる・・。 舞台は春日野八千代の雪組時代と1960年代の匂いを強く繋げている。 それは満州とヒースの厳しい荒野にも広がり、離れ離れの時間と空間が一つになり立ち現れてくる。 作品のエキスを忠実に掴み表現されていたからだと思う。 そして唐十郎の濃くの有る科白が高揚するときには、あのメリー・ホプキンの歌が聴こえてくるの。 「思い出すは、あの日のこと・・」。 この芝居の総てが歌声に乗ってやって来る。 ところで腹話術師の見世物は能で言えば中入り狂言ね。 人形と肉体の不思議な関係が作品全体に滲みていく。 そして寒い国からの来訪者甘粕大尉がAMAKASUと大きく書いてある白マントで登場したのはさすが美術系演出家ね、いつもは軍服なのに。 昨年末の「 少女都市からの呼び声 」を遡り<少女>の故郷に遂に辿り着いた。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/shoujokamen20200102.html

■少女仮面

■作:唐十郎,演出:金守珍,出演:李麗仙,松山愛佳ほか,劇団:新宿梁山泊 ■スズナリ,2015.9.30-10.7 ■李麗仙がゆっくりと階段を下り舞台に向かうとき、場内は水を打ったように静まり返った。 噛みしめる科白は冷静さを整っているが棒読みのような喋りである。 はじめは戸惑ってしまったが違和感は直ぐに薄れていく。 物語のシークエンスとシークエンスの間に時空を越える裂け目がある。 そこでは小道具、照明そして音楽が通奏低音として鳴り始め、役者が一気に時空差を埋める詩的科白を喋りだす。 ここに劇的世界が出現する。 宝塚少女のそして「嵐が丘」の、愛が塗り込められた「肉体」を永遠の乙女が語る。 特権的肉体は現れたか? 久しぶりに唐十郎の世界に浸れた。 *CoRich 、 https://stage.corich.jp/stage/67153

■2021年舞台ベスト10

■ 少女都市からの叫び声  演出:久保井研・唐十郎,劇団:唐組 ■ 眠れない夜なんてない  演出:平田オリザ,劇団:青年団 ■ セルセ  演出:中村蓉,主催:東京二期会 ■ 夜への長い旅  演出:フィリップ・ブリーン,主催:Bunkamura ■ 未練の幽霊と怪物ー挫波・敦賀ー  演出:岡田利規,主催:神奈川芸術劇場 ■ ウィルを待ちながら  演出:河合祥一郎,制作:kawai Project ■ ヤコブの井戸  演出:清水寛二,主催:銕仙会 ■ 桜の園  演出:ダニエル・ジャンヌトー,劇団:SPAC ■ 検察官  演出:レオニード・アニシモフ,主催:東京ノーヴイ・アート ■ あーぶくたった、にいたった  演出:西沢栄治,主催:新国立劇場 *並びは上演日順。 当ブログに書かれた作品から選出。 映画・映像は除く。 *「 2020年舞台ベスト10 」

■アダムとイヴ、私の犯罪学

■作:寺山修司,演出:J・A・シーザー,高田恵篤,出演:伊野尾理枝,小林佳太,木下端穂ほか,劇団:演劇実験室◎万有引力 ■ザスズナリ,2023.6.30-7.9 ■初めて聞く作品だが、中身は調べないで劇場にいきました。 トルコ風呂「エデンの園」の2階に間借りする家族4人の物語らしい。 立地や名前の付け方は唐十郎的です。 でも唐とは真逆の方向へ、いつもの寺山世界へ真っ直ぐに落ちていく。 その舞台は幾何学的無機質な造りになっていて床を剥がすとそこは天国・・!? 母親は禁断の果実の林檎をいつも食べている。 旧約聖書を意識して頭巾を被った聖職者も時々登場する。 それにしても話が進まない。 気の利いた台詞が数ヶ所あったが今は思い出せない。 聖書世界と4人の家族の結び付きが見えない為です。 後半、母と子の葛藤が見えてくる。 息子は家出をしたい! ロビンソン・クルーソーになりたい。 母を精神病院に入院させようとする場面が佳境でしょう。 前半は作者の迷い(のようなもの)が感じられた。 印象に残ったのは、家族4人各々の存在感が出ていたことでしょう。 特に母と二人の息子は科白に淀みがなく声も良く動作にも切れがあった。 若すぎる母は色気もあり舞台を華やかにしていた。 息子の一人は若松武史を意識しているのでしょうか? 近頃の万有引力は舞台の隅々まで熟れている。 良い意味でも悪い意味でも安心して観ていられます。 *寺山修司没後40年記念公演第2弾 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/260731

■少女仮面

■作:唐十郎,演出:黒田瑞仁,主宰:崎田ゆかり,出演:永濱祐子,林純平,小川哲也ほか,劇団:ゲッコーパレード ■下北沢・OFFOFFシアター,2023.3.16-19 ■隣の駅前劇場より狭いO FFだが、今日の舞台はアリーナ型上演のようです。 「(役者)一人ひとりの欲望が舞台上で飛び出してくれば・・」(主宰挨拶)。 型に似合った挨拶どおりの、ビックリするくらい飛び出てきた舞台でした。   ゲッコーパレード? 変わった名前として記憶にぶら下がっていたが、劇団を観るのは今回が初めてです。 「・・人の集まりこそがパレードのように活動や表現を形成していく」。 春日野八千代と少女はもとより、腹話術師と人形、水飲み男、ボーイ、・・、それぞれが夫々の瞬発力で輝いていました。 多くの役者が一度に登場しても存在感ある静止状態で狭い空間が縮まらない。 「作者との世代の隔たりは無視できず・・」(演出ノート)、唐系の劇団と違い戯曲を素直に展開していたように感じます。 作品に初めて接した人は何もない空間のため戸惑ったかもしれない。 この劇団は「一軒家という「演劇の上演を行う場所でない」場所で活動している・・」(演出ノート)。 普通に生活しているような住居なのか? 役者と観客が混ざり合ってしまう? 一軒家でいちど観てみたいですね。 作品が持つ俳優と観客(ファン)、そして劇場の俳優と観客、ほとばしる肉体、その昇華・・。 久しぶりの「少女仮面」でしたが、今日の舞台もカタルシスがやってきました。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/231426

■風のほこり

■作:唐十郎,演出:金守珍,出演:新宿梁山泊 ■芝居砦・満天星,2011.1.21-30 ■とある芝居小屋の舞台下、そこが劇団の文芸部室。 水が流れ落ち、まるで大きな下水道の中の溜まり場に作られているような舞台だ。 幕があがってすぐに義眼女田口加代と文芸部水守三郎が遠い思い出の甦るようなセリフを早口で喋り、観る者は昭和5年の浅草に引きこまれていく。 水が目薬になり、水の鍵を探そうとしたり、水は芝居の流れに寄り添いドロッとした空気のように感じられた。 そして目玉の不思議さも加わり妖しい雰囲気が漂う。 これに過剰な言葉が役者の身体から紬ぎ出されると観客も未知の過去世界に落ちていく。 ひさしぶりに唐の水の世界に浸った。 しかし寒い冬に水の舞台は身にしみる。 題名に風をつけるのは合わない。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/24831

■朝倉摂展

■感想は、「 朝倉摂展 」 *話題になる語句は「近松心中物語」「下谷万年町物語」「タンゴ冬の終わりに」「唐版滝の白糸」、「唐十郎」「蜷川幸雄」。

■ヤバレー、虫の息だぜ

■ 作・演出:江本純子,出演:毛皮族 ■ 座高円寺1,2013.1.23-27 ■ 2階建てで上が劇中劇の舞台、下が楽屋の舞台構成です。 なんと舞台ではあの映画「クレージーホース」を生実演します。 ですから下の楽屋は踊り子や舞台担当の溜まり場になります。 それにしても楽屋での踊り子の話はつまらないですね。 対話になっていません。 ストーリーが深まって行きません。 高校演劇でもこれ以上でしょう。 出産の映像は結構異化効果がでていましたが。 そして楽屋の雰囲気や赤系統の色彩はよかった。 終幕近くの道具係が銃で殺される場面から面白くなりました。 唐十郎の名前がセリフにもありましたが、終幕は唐の雰囲気がでていましたね。 驚きですが演出家は映画ではなくパリで実演を観たそうです。 それで迫力があったんですね。 クレージー!! *CoRichサイト、 https://stage.corich.jp/stage/42892

■夏芝居ホワイト・コメディ

■作:鶴屋南北ほか,演出:鈴木忠志,出演:観世栄夫,渡辺美佐子,白石加代子,吉行和子ほか ■早稲田大学・小野記念講堂,2016.1.25(アートシアター新宿文化,1970年収録) ■鶴屋南北作「杜若艶色紫」を歌舞伎の数場で構成し、人形浄瑠璃「加賀見山旧錦絵」の一部を劇中劇にした舞台の記録映画である。 上映時間約60分。 フィルム状況は補修しているが役者の細かい表情は読み取れない。 着物や反物を内幕にした奥が浅い舞台である。 科白は歌舞伎調で早口のため追うのが大変。 地歌舞伎を観ている感じだ。 観世栄夫と白石加代子の突き抜ける声が素晴らしい。 江戸時代と現代をなんなく飛び越える声である。 また尾上(渡辺美佐子)を草履で打つ岩藤(白石加代子)の喋り方にも圧倒される。 演出家鈴木忠志の特徴ある存在感や様式美は舞台にはっきりと現れていない。 役者の個々力量が目立っている。 当時の映像は初めてだがその時代に立ち会わないと大事なところは見えてこない。 役者も観客も同じ時代を走っているから舞台は面白いのだろう。 アーフタートークを聞く。 出席は渡辺美佐子・白石加代子・大笹吉雄、司会は岡室美奈子。 とても面白かった。 少し記すと・・。 なぜ新劇渡辺美佐子が鈴木忠志の芝居に参加したのか? 詳細は不明だが観世栄夫の仲介だった(大笹)。 なぜ南北なのか? 当時は俳優座や青年座が南北を取り上げこの作品もその流れである。 南北が歌舞伎に広まったのはその後である(大笹)。 なぜ新人会を脱会したのか? 映画作品を舞台化して全国を回る計画に賛成できなかった(渡辺)。 他劇団との関係は? 唐十郎は行き来していたが寺山修司はお互い認め合っていなかった(白石)。 なぜ文学座・俳優座・民藝等の劇団の壁が壊れていったのか? 日生劇場(次に東横劇場)ができたからである。 この劇場は壁を無視した(大笹)。 ・・。 *早稲田大学演劇博物館、 https://enpaku.w.waseda.jp/ex/4235/