■唐版 風の又三郎

■作:唐十郎,演出:金守珍,出演:窪田正孝,柚希礼音ほか
■シアターコクーン,2019.2.8-3.3
■演出家をみてチケットを購入したの。 金守珍は唐十郎より唐的な世界を作るからよ。 しかも柚希礼音が夢うつつを飛び交う打ってつけの役エリカで登場するし・・。
はたして織部役窪田正孝も少年からの脱皮前を巧く演じていた。 二人の声は劇場空間をきれいに響き切っていたわよ。 科白は照明と音響を道連れに時空を一瞬でジャンプする力を持っている。 これができるのは唐十郎と演出家が密結合しないと実現できない。 今できるのは金守珍しかいないということかな。
オジサン俳優の古い台詞表現で興覚めした場面もあったけど1968年から太平洋戦争まで遡る力には灰汁がある。 「ベニスの商人」や「オルフェウス物語」と珍腐淫腐乱腐の尻に張り付けた菊花紋が混ざり合うと戦後日本の混乱がジワッと滲み出てくる。
終幕、飛行機が空を飛ぶ手の込んだ舞台は逆に想像力が縮むわね。 20世紀前半の語句も多かったから台詞を聞き逃したところがある。 そこははっきり喋ってほしい。 唐十郎の世界へ飛んでく翼は言葉だから。 それでも久しぶりに風の又三郎に出会えた気分よ。
*Bunkamura30周年記念,シアターコクーン.オンレパートリー2019作品
*劇場サイト、https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/19_kazemata/