■Memory of Zero メモリー・オブ・ゼロ

■身体の記憶
■最後の物たちの国で
(以上2作品上演)
■音楽:一柳慧,演出:白井晃,振付:遠藤康行,指揮:板倉康明,出演:小池ミモザ,鳥居かほり,高岸直樹,引間文佳作ほか,演奏:藤原亜美,西澤春代ほか,東京シンフォニエッタ
■神奈川県民ホール.大ホール,2019.3.9-10
■第一部「身体の記憶」は見応え聴応えがあった。 ダンスと音楽が見事に共振していたからである。 久しぶりに脳味噌が喜んだ。 「ジャポン・ダンス・プロジェクト」メンバーとしての遠藤康行は何回か観ている。 振付は整然とした流れで厚みがある。 20名近いダンサーの動きに切れがあるので心地よさがやってくる。 一柳慧の4作品を背景に確か1931年迄遡り再び2019年に戻るストーリーになっていたようだ。 途中、群衆の寄り添う場面やクラリネット奏者がダンサーの間を縫う箇所もあり面白い構成になっていた。
第二部は「最後の物たちの国で」。 休息時間に急いで粗筋を読む。 ディストピアを描いた1987年の小説で作者はポール・オースターという人らしい。 白井晃が小説の断片を朗読しながらダンサーたちが踊るというより動き回る演劇的ダンスである。 舞台は市街戦のようだ。 主人公アンナは小池ミモザ。 しかし登場人物の関係が覚えられないので混乱した。 「身体の記憶」を延長した「関係の記憶」を表現しているようだ。 白井晃の数回の朗読が巧く効いていた。 上演回数は二回しかないので実験的舞台にみえた。 ダンサーたちの演劇的動きよりダンスをもっと見たかったが・・。
舞台上に臨時客席を設けたのがとても新鮮に感じた。 築40年の古さも味がある。 東京圏の芸術監督は何人もいるが白井晃の作品は他監督とは一味違う。 彼は予想できない舞台を出してくる。 そこが面白いのでついつい横浜へ足が向いてしまう。 (キラリ富士見の多田淳之介も同じような監督かな)。 配られたプログラムも楽しく読んだ。 三浦雅士の1970年代以降のダンス史、一柳慧と白井晃の対談、高橋森彦のダンサー取材等々。 贅沢な舞台だった。 東京には負けられないという神奈川芸術文化財団の意地がみえた。 都合でアーフタトークは聞かないで帰途につく。
*一柳慧X白井晃神奈川芸術文化財団芸術監督プロジェクト
*劇場サイト、https://www.kanagawa-kenminhall.com/detail?id=35612