■少女都市からの呼び声

■作:唐十郎,演出:小林七緒,音楽:諏訪創,振付:スズキ拓朗,プロデューサー:流山児祥,出演:山下直哉,原田理央,井村タカオ,山丸莉菜ほか
■SPACE早稲田,2019.12.6-18
■作品の粗筋はすっかり忘れていた。 でも舞台が始まると記憶より先に懐かしさがやってきたわよ。 「少女仮面」と姉妹のような作品にみえる。 それは氷の帝国へ、そして満州へと繋がっていくから。 そこにガラスの世界がきっとある。
唐十郎が少年期にみた風景が至る所に散らばっている。 しかも舞台は作者世界の荒々しさが出ていた。 演出家にパワーの有るのが分かる。 歌唱や振付は巧過ぎて唐世界から外れてしまっていたけどね。 でも50年の時が混ざり合っている面白さはあった。 田口の指を一本ずつ切り落とす血が妹雪子のガラスの身体に机にベッタリと付いていくのを見ると眩暈がおそってくる。 そしてガラスを擦り付ける金属音はダメ押し! ガラスの子宮と血は交われない。 
舞台に緞帳が掛かっていて幕間で繰り広げる寸劇は紙芝居を意識しているはず。 異化効果と次に何が起こるかのドキドキ感を狙っていると思うの。 そして汚れの目立つ地下にある小さなこの劇場が作品に見事合致していたことを付け加えておくわね。 この春に観た「風の又三郎」に違和感があったのは劇場が合わなかったということかな、たぶん。 ということで、今年一番の唐十郎世界に浸れた舞台だった。 楽しかったわよ。
*新進演劇人育成公演俳優部門作品
*CoRichサイト、https://stage.corich.jp/stage/104860