■常陸坊海尊 HITACHIBOU KAISON

■作:秋元松代,演出:長塚圭史,音楽:田中知之,出演:白石加代子,中村ゆり,平埜生成,尾上寛之ほか
■神奈川芸術劇場.ホール,2019.12.7-22
■「源義経の家来常陸坊海尊は「衣川の戦い」で主人を見捨て逃亡し、その後不老不死となり400年以上を生きて源平合戦を人々に語り聞かせた・・」とある。 これだけでもウキウキしてくる。 はたして・・、息をするのも忘れるほどのストーリーだった。
昭和20年、疎開児童たちが海尊の妻と称する御婆と孫娘雪乃の神隠しに遭ってしまう。 それから16年後、児童の一人が神隠しにあった友達に会いに行く・・。 という話である。
海尊がなぜ衣川の戦場で逃げたのか? それは怖かったからだと本人が語る。 拍子抜けの答えだが人として真っ当でもある。 琵琶を弾きながら登場する海尊はどこか神経質だ。 罪より恥を背負っているとでも言おうか。 次に海尊は日本軍兵士になって戦争の醜さを語る。 最初と違う役者だ。 海尊の魂は時代に見合った肉体に乗り移りながら数百年を生きながらえているようだ。 終幕に青年の啓太が海尊になることで分かる。
後半に入り驚きの展開を目にする。 魔性となった美しい雪乃は近づいた男たち、啓太や氏子を次々と餌食にしているのだ。 啓太を訪ねた疎開先の友だった豊も危うく彼女に囚われそうになる。 「高野聖」の世界を思わず浮かべてしまった。
予期せぬ名前、泉鏡花が浮かび混乱してしまった。 海尊とは何者なのか? 4人の海尊が登場したが統一感が無い。 「高野聖」との違いは、<母の性=聖母>は御婆で<女の性=魔性>は雪乃という二人に分かれたことだろう。 疎開友達の啓太と豊は二つの性に遭遇したのだが・・、この話は海尊から外れる。 そして啓太は何故海尊にならなければいけないのか? 腑に落ちるところもあるが、疑問が一杯の舞台だ。 しかし人の業が絡み合ってできている物語だ。 ・・疑問はそのまま持っていることにしよう。
ところで疎開先の子供たちの演技が淡々としていてとても良かった。 それとバスガイドは笑ってしまった。  方言は理解できなくてもどういう訳か分かるのが面白い。
*劇場サイト、https://www.kaat.jp/d/kaison
*「このブログを検索」に入れる語句は、 長塚圭史、 白石加代子